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君と駆ける······  作者: 志賀 沙奈絵


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608話


「パッパァ〜、バンバェ〜」

「もう少しっ‼ 頑張ってぇ〜っ‼」


 土曜日、札幌競馬場で春香と凱央は大声で雄太に声援を送っていた。


「ねぇ……。あの子って、口取りの時に居た子……?」

「もしかして、鷹羽騎手の奥さん……?」

「あの子、鷹羽騎手にそっくりだよな?」


 ゴール板前で声援を送る春香達から少し距離をとって、ヒソヒソと観客達が話している。


 雄太がレンタルしておいてくれたベビーカーに乗り、馬のぬいぐるみをフリフリしながら『パパ』と言っている凱央と『雄太くん』と呼びながら応援していれば分かってしまうのは当然だろう。


「キャア〜。勝ったぁ〜。凱央、パパ勝ったよ」

「パッパァ〜、パッパァ〜」


 一着でゴール板を駆け抜けた雄太に春香と凱央は拍手をする。


 雄太に夢中だった春香が、ふと視線を感じて振り向くと、たくさんの人達が春香と凱央を見ていた。


(え? あ……)


 何と言って良いものかと考えたが、良い言い回しが思いつかずにペコリと頭を下げた。


「凱央。次にパパが走るまでに飲み物とか買いに行こうね」

「アイ。マッマァ〜」


 春香は、もう一度周囲の人達に会釈をして、売店へと向かう為にベビーカーのブレーキをはずした。


 凱央はバイバイと手を振り、周りの注目を集めていた。


「か……可愛い〜」

「やっぱり、口取り式いた子だよ。可愛いな」

「……G1騎手の奥さんなのに、俺達に頭を下げたぞ……?」

「何か……奥さん可愛い人だよね? 結婚式の時と変わってないような……」


 雄太が一着になり、春香はご機嫌で歩いていた。凱央もぬいぐるみを振りながらキャッキャと喜んでいる。


 雄太と慎一郎と口取り写真を撮ってもらった事、結婚式を生中継した事で、春香の顔は知られているが覚えられているという自覚が乏しいようだ。


「あ、ソフトクリーム売ってる……」

「マッマ、ウィーム〜」

「北海道だもんね。牛乳が美味しいんだから、ソフトクリームも美味しいはず」


 ウキウキとソフトクリームを買い、凱央の口元に近づけるとアムッと食べる。


「美味しい?」

「ウマウマァ〜」


 口元をソフトクリームだらけにした凱央を見て、周りの人達から笑みが溢れる。中には、雄太の妻子であると気づいた人もいたが、笑顔で見守ってくれていた。


「マッマ、オットォ〜」

「はいはい」


 ソフトクリームを堪能した凱央と、またレースを見る。迫力のある現地での観戦に、凱央も大興奮だ。


 純也が一着になったのも見られ、札幌競馬場での観戦一日目は大満足で、ホテルへと戻った。



(雄太くん、格好良かったなぁ〜)


 凱央と風呂に入りながら、春香は一着になった雄太の姿を思い出していた。


 キリッとした真剣な顔をして馬に跨っている姿は、何度見ても惚れ惚れする。


(えへへ。雄太くん、大好き)


 金曜日からは、雄太とは過ごせない。だが、直ぐ近くにいると思うだけで嬉しくなる。


 普段なら、どれだけ近くでも滋賀と京都という距離がある。それよりも、もっともっと近い。とは言え、既に雄太は小倉に行っているのだが……。


「凱央。明日は小倉のパパを応援しようね」

「ン」


 凱央は、雄太が居ない日がある事も慣れたのだろうか。ニコニコと笑いながら、金魚やアヒルで遊んでいた。




(はぁ……。北海道から九州って長距離移動って騎手ならではだよなぁ……)

「雄太、春香ちゃん達を北海道に残してっての、よく決心したな?」

「まぁ、距離は離れてますけど、北海道で一緒ってのが嬉しいんですよ」


 缶コーヒーを飲みながらウダウダ話している雄太と鈴掛。


「純也と飯食ってたんだって?」

「ええ。春香と凱央に美味い海鮮を食わせてやりたいなってのもあったんですよ。まだ、凱央は生物ナマモノ食えないですけどね。焼き鮭とかホタテのバター焼きとか食ってましたよ」


 鈴掛はよく食べるようになった凱央を思い出し、ふふふと笑う。


「凱央、お前と体質似てるんだな。結構食うのに太らねぇしな」

「あ〜。そうかも知れないですね」


 子育て経験者の鈴掛と子供の話をするのも楽しいと思う雄太だった。




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