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君と駆ける······  作者: 志賀 沙奈絵


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592話


 3月18日(月曜日)


 14日に二十二歳になった雄太の誕生日パーティーをしたいと、春香は一ヶ月以上前から、一生懸命考えていた。


(……ありきたりじゃないのがしたいな)


 出前の寿司、良い肉でのすき焼き。どれも豪華で良いのだが、何度もしたので、何か変わった事がしたいと思ったのだ。


(三月って何かあるかな? お花見はまだ先だしなぁ……。普段、雄太くんが出来ない事……とか?)


 厩舎の付き合いや仲間と飲みに出る事をしたりして、色んなお店にも行く雄太に目新しい事がない気がして悩みは深くなっていった。




「は……春香……?」

「あ、雄太くん。私、炭をこさないといけないから、凱央を見ててね」

「え? あ、うん」


 春香は、ウッドデッキに出したガーデンテーブルの上に防火マットを敷き長方形の七輪を置いて、鼻歌交じりにフェザースティックを置いて火を着け始めた。


 テーブルの上に並んだ食材を雄太はマジマジと見た後、お気に入りの馬に乗りながら爆走している凱央を見ながら春香に声をかける。


「えっと……さ。あえて訊くけど……これって……焼き鳥……だよな?」

「正解〜。今日のバースデーパーティーは焼き鳥なの」

「う……うん。けど……店かと思うぐらいの数だな……」

「頑張っちゃった」


 語尾に音符マークがついてるかと思うぐらいのノリノリの春香がいつも以上に可愛く見えるのだが、雄太の前にあるのは、大量の食材……焼き鳥になるべくスタンバイしている串うちが終わった鶏肉を始め様々な食材が鎮座している。


「これ、全部自分で……?」

「うん。美味しい鶏肉を売ってるお店を教えてもらったから買いに行って来たんだぁ〜。あ、ツクネは私のオリジナルなんだよ。基本は、東雲の近くの焼き鳥屋さんたけど」

(えぇ……。これだけの量を串に刺すのって、どれだけ時間かかるんだよ……)


 純也と話していた時に、春香は雄太と凱央が最優先と言うのを思い出した。


 その時、インターホンが鳴りモニターを覗くと純也達が映っていた。


「春香。ソル達が着いたみたいだ。直接、ウッドデッキに回ってもらうぞ〜」

「はぁ〜い」





「おぉ〜。炭火焼きの焼き鳥?」

「串を置く台、買ったんっすか?」

「良いですねぇ〜」


 純也達は、ウッドデッキで焼き鳥を焼き始めている春香の姿に目を丸くする。


「えへへ。頑張って焼きますね」

「マッマァ〜。ンマンマァ〜」

「はいはい。ちょっと待ってね」


 純也達の手土産を冷蔵庫にしまった雄太がウッドデッキに出ると、梅野が缶ビールを手渡す。


「あ、ありがとうございます」

「んじゃ、雄太から一言なぁ〜」

「え……。あ、えっと……。春香と出会ったのが十七歳。十八歳の手前でした。それから、色々あって春香と付き合えて、凱央が生まれて二十二歳になりました。これからも俺達家族をよろしくお願いします。乾杯」


 雄太に言われて、もうそんなに経ったのかと皆が思いながら乾杯をする。


「てか、バースデーパーティーが焼き鳥っておもしれぇな」

「ふふふ。何か、いつものお祝いの会とは違う事をしたいなって思ったんです」


 春香は手際よく焼き鳥を焼いていく。凱央は、雄太が小さくしてくれたツクネをマクマクと食べている。


「マッマァ〜。オ〜チィ〜」

「ありがとう、凱央」

「え? 凱央、美味しいって言ったぁ〜?」

「ええ。覚えたみたいです」


 ほんの数日会わないだけで凱央の成長が凄いなと純也達は思った。


「凱央。その内、純也の事をおじちゃんって言うんだぞ?」

「鈴掛さんっ‼ おじちゃんって教えないでくださいっすっ‼」


 鈴掛がニヤニヤ笑いながら純也をかまっていると、凱央が純也をジッと見た。


「ウォウ〜」

「へ? 凱央、今……」

「ソルって……言ったか?」


 雄太と純也が凱央の顔をガン見する。鈴掛と梅野のビールを呑む手が止まる。


「凱央、もう一回言ってみ?」

「ウォウ〜」

「あはは。まさか、雄太の息子にまで『ソル』って呼ばれるとは思わなかったなぁ〜」


 純也は思いっきり凱央を撫でながら嬉しそうに笑った。




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