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君と駆ける······  作者: 志賀 沙奈絵


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第22章 雄太とゾルテアレックス 585話


 3月8日(金曜日)


 中京競馬場の調整ルームで、いつものように雄太の部屋で食後の駄弁りタイム。


 純也は小倉競馬場に行っていて、そんなに騒がしくならないと思っていたが、ふいに思い出した事を鈴掛が雄太に訊ねた事から一気に騒々しくなった。


「雄太、ゾルテアレックスの調子良さそうだな」

「良い感じですね。なんて言うか……手が合ってるんじゃないかなって感じがしましたよ」

「春香さんとは仲良くなったかぁ〜?」


 鈴掛と梅野に雄太はゲッソリとした感じで苦笑いを浮かべる。


「その感じは……まさか……か?」

「その『まさか』です……。散々舐められてました……」

「プッ」


 思わず吹き出す鈴掛に雄太は一気にヒートアップする。


「笑い事じゃないですよっ⁉ 鼻とか唇が取れるんじゃないかって言うぐらいにベロンベロン舐めるんですよっ⁉ 俺の春香をっ‼」

「ブフフ。ま……まぁ、相手は馬だしな」

「馬とは言え牡馬ぼばですっ‼ オスですっ‼ 男ですっ‼」


 フルフルと拳を震わせながら力説する雄太がおかしくて、鈴掛も梅野も笑いが止まらなくなる。


「しかもですよっ‼ アルの奴、俺が止めたら更にベロンベロン舐めたんですよっ⁉」

「それは、もうアレックスからの挑戦状だなぁ〜。『春香はオレの女だ。唾つけた』って奴だよぉ〜」

「なっ⁉」


 雄太が呆然とすると、梅野はニヤリと笑う。


「イケメンでガタイが良いライバルだなぁ〜。しかも、種牡馬になったらワンシーズン100以上平気で種付けこなす絶倫だからなぁ〜」

「ちょっ‼」


 いつもなら止めるはずの鈴掛は笑い転げていてストッパーにならない。梅野はニヤニヤと雄太に迫る。


「しかも、相手が馬だと浮気にもならないしなぁ〜」

「の゙わ゙ぁ〜っ‼ 何て事を言うんですかぁ〜っ‼」


 ジャレ合う雄太と梅野を見ながら、鈴掛は少し安心をしていた。


(雄太が女性タレントに誘惑されてどうとかって聞いた時は、万が一を考えたんだけどな)


 いくら雄太が春香に惚れていても、やはり若い男だ。魔が差すと言う事もあるかも知れないと思ってしまったのだ。


 しかも、迫られたのが楽屋と言う場所で二人っきり。邪な気持ちが湧いてもおかしくないだろうと要らぬ心配をしていた。


(雄太なら大丈夫だと思っていても心配になるんだよな。コイツ若い上に賞金稼いでるし、金目当ての女が近寄ってくるのが当たり前って思ってないとなぁ……)


 春香と付き合い始めた頃、春香との付き合いを反対していた大人が『雄太の金目当て』と言っていたが、今の雄太はその時の比ではないぐらいに稼いでいる。


(今の雄太のほうが心配なんだよなぁ……。今の時代にも『浮気は男の甲斐性』とか言う奴がいるけど、春香ちゃんを泣かせるような事になったら、俺は雄太をブン殴っちまいそうだ)


 未だ、鈴掛の父親モードは健在のようである。


「は……春香がアルの嫁になるとかないですからねっ‼」

「わっかんねぇぞぉ〜」


 スッカリ話題が変な方向に行ってしまっている雄太と梅野をチラリと見て、缶コーヒーをグイッと飲む。


(ま、馬にまでヤキモチ焼いてる奴が、他の女に目移りするとかないか)

「そう言えば、例の香水女には何か対処したのか?」


 鈴掛は飲み干した缶コーヒーの缶を置きながら訊いた。


「へ? あ、共演NGにしてもらいました。もう二度と一緒に仕事したくないですし」


 雄太の嫌悪感を隠す事のない表情が本気で嫌だったのだと物語っている。


「そうだなぁ〜。それが一番だよな。ばったりテレビ局で会う可能性はゼロじゃないけど、雄太が共演したくないって意思を伝えておくのは良いと思うぞぉ〜」

「俺も賛成だな。既婚者に迫るような女が雄太と接触する機会は減らしておかないと」


 鈴掛の言葉を聞いた梅野がニヤリと笑って雄太の両肩を掴む。


「そんな尻軽な女に引っかかったら、春香さんはアレックスの嫁になるからなぁ〜?」

「引っかからないしっ‼ 春香をアルの嫁にはしませんっ‼」

(まだ続きやるのかよ)


 再び始まった雄太と梅野のジャレ合いを苦笑いを浮かべて見ていた鈴掛だった。





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