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君と駆ける······  作者: 志賀 沙奈絵


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576話


(結局、昨日は盗聴器の話、出来なかったな……)


 自宅にも荷物は届くことがある。最低限、送り主に覚えがない荷物は、春香一人では開けないほうが良いと伝えなければならない。


 そうして、もう一つの厄介事の香水女の事。トレセンからの帰り道に待たれている事があったのだ。


(やめてくれっ‼ 頭痛と吐き気が大変なんだぞっ‼)


 ファンサービスと言う事で無視する事も出来ず、その日は夕飯をロクに食べられない状態になった雄太は、通勤に自転車を使うのを止めた。


 そして、車載電話をつけてトレセンなり競馬場から帰る時に自宅に電話をして、防犯カメラのモニターで雄太の車が見えたらタイミング良くシャッターを開けてもらうようにした。


(活躍して有名になるってのは自由がなくなる事だって分かってたけど……さ)


 先日、春香の祖母の墓参りに訪れた神戸で、何年か振りにファミレスに行き、楽しそうに食事をする春香を見られて心の底から嬉しかったのだ。


(たまにはファミレスに連れてってやろう。凱央が一緒なら、外野もどうこう言わないだろう)


 自宅に着くタイミングでシャッターがゆっくりと上がる。雄太は上りきる前に車を入れ、車体が敷地内に入るとシャッターが下り始める。


 シャッターが下り、雄太はホッと息を吐いた。


(さて……と……。覚悟を決めなきゃな)


 いつものように風呂に入り、凱央が寝付くのを待って、雄太は盗聴器事件の話を春香に告げた。





「そっかぁ……。だからここ最近、雄太くんファンの人からの贈り物を持って帰って来なかったんだね……」

「あぁ。俺の手元に届く前に確認してもらってるっていうのもあるんだけど……。俺が、プレゼントをもらうって事が億劫おっくうになってるんだ」


 春香は手にしていたティーカップをそっとテーブルに置いた。


「良いファンの方々には申し訳ないけど、雄太くんのストレスになる事は避けても良いと思うよ? だって、集中力が必要なお仕事だもん。私、雄太くんが落馬したりするの嫌だよ」

「ありがとう、春香。これから先、自宅宛の荷物が届いたら、とりあえず俺の部屋かコレクションルームに置いておいてくれるか?」

「うん」


 雄太が想像していた程、春香のショックは小さかった。それが不思議だった雄太が訊ねると、春香はニッコリと笑った。


「あのね、雄太くんが留守の時に盗聴器を使った犯罪の番組を見たんだよね。コンセントに付けるタップ型のだったり、電池式のが入ってるぬいぐるみだったり。で、有名な人や若い女の子の部屋とかが狙われるってやってたの」

「あ、そう言うの見てたんだ?」


 春香がそういったテレビを見ているとは思ってなかった雄太は目を丸くした。


「うん。たまたまなんだけど、気になったから見てたの」

「そっか。タップは使ってないし、ぬいぐるみとかは施設に寄付してるし大丈夫だとは思うんたけど、春香は何か気になる物はあった?」


 雄太目線では気がつかなくても、主婦目線だったり、女性目線では気がつくかも知れないと思い訊ねてみた。


「ううん。大丈夫。盗聴出来そうなのはなかったよ」

「なら良かった」


 ホッと一息吐いて、少し冷めてしまったコーヒーを口にした。


「でも……」

「え? 何かあった?」


 春香が雄太から視線を逸らす。明らかに言いにくそうな顔をした春香に焦る。


「何かあったなら教えてくれ。もし、春香や凱央が危険な目に遭う……」

「じゃなくて、あの……ね。その……紐にしか見えない女性用の下着とか……変なコンドームとか……ヌード写真は、出来れば私の目に入れないで欲しいな……」


 盗聴器のインパクトが大き過ぎて、処分しようと思ってまとめていた品物をそのままにしていた事に気づいた雄太は焦りに焦った。


「ごっ‼ ごめんっ‼ そのっ‼ あれはっ‼」

「一瞬、雄太くんが浮気してるのかなって思っちゃいそうだったよ……」

「ないからっ‼ 浮気なんて絶対にしないからっ‼」


 盗聴犯も許せないが、春香に誤解を与えるような物を送ってくる人への排除をしたいとつくづく思ってしまった雄太だった。



 


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