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君と駆ける······  作者: 志賀 沙奈絵


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567話


 1月27日に東京で開催されたG3デイリー杯クイーンカップを勝った雄太は、新聞などに『年内初重賞勝利』と大袈裟に書かれていて溜め息を吐いた。


(注目されるのは、そこまで嫌じゃないけどさぁ……)


 ハーティに騎乗してから、更に注目度が高まった事もあり、プレゼントやファンレターが爆増していた。


(これ……どうすんだよ……、マジで……)


 雄太が多くの荷物に頭を悩ませていたところに、純也が駆け寄ってきた。


「雄太ぁ〜。え……?」

「ソル……」

「この大荷物……何?」

「厩舎宛に届いてた奴……」


 地面に置かれた箱の数々とや大きな紙袋を見て純也が固まる。


「……辰野調教師(せんせい)んトコに配達されてんだ……、コレ」

「あぁ。俺、手紙なんて半年以上前のも読めてないんだぞ……? これを読み切るだけでも、何日要るんだよぉ……」

「人気があるのは羨ましいけど、これだけの数を読まなきゃなんないとか罰ゲームだな……」


 読まずに捨てると言う考えに及ばないのは雄太と純也の優しい性格ゆえだろう。しかし、毎日何十何百と届くファンレターを読むには時間が足りない。


「ファンレターもだけど、このプレゼントって何が入ってんだ? 見たんだろ?」

「あんま……見たくない……。持って帰りたくもない……」

「へ?」


 何かあっては大事おおごとだからと飲み物や食べ物は受け取らないようにしてある。中身に何か細工をされている可能性がゼロではないからだ。


「これの中身見てみろよ……」

「は? うん」


 雄太が手渡した箱を純也は開けてみた。


「な……な……な……何だ、これ……」

「こんなの送ってくる神経が分かんねぇよぉ……」


 箱の中にあったのは、ショッキングピンクの女性用の下着。しかも、布面積がほぼなく、紐と言ったほうが正解なぐらいの物だった。


「た……確かに……な。なぁ……、もしかして、こんなのが大量に贈られてくんのか?」

「……前は使用済みの下着があった……」

「は? え゙……」

「コンドームが三箱とかもあったな……」

「お……おぅ……」


 純也の頬がピクピクと引きつる。


「ファンレターの中にヌード写真とか入ってたのもあったしさぁ……」

「……そんなの春さんが見たら……ショック受けるだろうし、下手すりゃ泣くよな……?」

「だろ……?」


 ウンザリといった顔をしてしゃがみ込む雄太に、何と声をかけて良いものやら分からず、純也がプレゼントの箱の一つを手に取る。


「あれ? これってそんな悪いモンじゃねぇな」


 純也が開けた箱の中に入っていたのはスポーツブランドのTシャツとスポーツタオルだった。純也は次の箱を開ける。


「これは……ぬいぐるみだぞ」

「ぬいぐるみは良いんだ。養護施設の子供にあげられるから」

「そうだな」


 純也は次の箱を開ける。


「あ、これ良いな」


 少し大きめの箱に入っていたのはルームランプ。土台が薄いピンクなのは、男性である雄太にプレゼントする物としては疑問がない訳ではないが、シンプルな物だった。


「あのさ……。ソルが良いって思う物は持って帰ってくれるか? 俺は、養護施設に送る物を事務所に預かってもらうからさ……」

「良いのか?」

「ああ。使わずにしまい込むってのも贈ってくれた物に申し訳ないからな。メッセージカードとかは抜いてあるから、送り主の気持ちは受け取ったって事になるだろうし」

「それもそうか。物置にしまわれたままだと、こいつらも可哀想だもんな」


 純也は苦笑い浮かべながら、一つ一つ箱を開けて中身を確認する。


 騎手へのプレゼントらしく、Tシャツやスポーツタオルなどが多かった。雄太のサイズには合わないシューズもあった。


「あ、これ良いな」

「ソルはランニングするから丁度良いだろ」


 スポーツブランドのジョギングシューズは、純也にピッタリのサイズだった。


 純也は車に箱を積み込み、ついでに事務所に預ける物も積めた。


「んじゃ、事務所寄ってから雄太ん家に荷物運んでやるからな」

「頼むよ」


 純也に荷物を任せ、雄太は先に自転車で自宅へ戻った。





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