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君と駆ける······  作者: 志賀 沙奈絵


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558話


 カセットコンロを出して鍋を置いた雄太は、ウッドデッキで純也と遊んでいる凱央をチラリと見る。その雄太の視線に春香が気づいた。


「塩崎さん、子供の扱い上手いよね」

「ん? そうだな。健人ともキャンキャンやりあってるから、精神年齢が近いんだろ」

「雄太くんたらぁ〜」


 自分の大切な息子を任せるぐらいには信頼しているのが分かっているからケラケラと笑ってしまう。


 憎まれ口を叩いてはいるが、きっと純也の子供が出来たら雄太は遊んでやるに違いないと思う。


(雄太くん、照れ屋さんなんだよね。特に塩崎さん絡みだと)


 遊び疲れた凱央と純也が家に入り、飲み物を飲みながら休憩していると、箱入りの大量の近江牛を手に直樹達が訪れた。


 慎一郎達が訪ねてきた数分後、大きな桶に入った特上の寿司が届けられた。寿司屋と同じタイミングで訪れた鈴掛と梅野は、春香にケーキを手渡しながら、純也を見ている。


「うはぁ〜。俺、人生で一番幸せな瞬間は今かも」


 とろけるような顔でニマニマしている純也を見て皆が大笑いをする。


「お前の誕生日パーティーじゃないだろ」

「全くですねぇ〜」


 鈴掛と梅野が呆れているのにも気づかず、純也は幸せそうな顔で寿司や牛肉を眺めていた。


「ンマンマァ〜」

「はいはい」


 本日の主役の凱央が、ベビーチェアに座りながらテーブルをペチペチと叩いている。滝ヨダレを春香が拭う。


「凱央のヨダレが酷いから……ソルもか。昼にはちょっと早いけど始めようか」


 雄太が苦笑いを浮かべると、皆も笑いながら頷いた。


 グラスに飲み物を注ぎ、皆の目線が雄太に向く。


「それじゃ、凱央の一歳の誕生日おめでとう」

「塩崎さんのお誕生日と雄太くんの二週連続G1勝利おめでとうもね」

「そうだな。乾杯」


 雄太の言葉の後に春香が続け、たくさんのおめでとうパーティーが始まった。


 鈴掛達からのプレゼントであるイチゴがいっぱいのケーキに一本ロウソクを立てて火を灯す。


「凱央、フゥ〜ってするんだよ」

「ウ」


 凱央に分かるかなと皆が思っていると、凱央はフゥフゥと息を吐いて火を消した。皆がパチパチと拍手をすると、凱央も真似をする。


「もう一年経つんだな」

「ついこの前って気がしますねぇ〜」


 祖父二人は、あの時『男親は無力』と語り合ったのを思い出し苦笑いを浮かべる。


 里美と理保が祖父ジィジ二人が語らっているのをクスクスと笑いながら見ている。


「本当、ジジ馬鹿っぷりに拍車がかかっちゃってるんだから」

「フフフ。あの孫自慢のシーンは、本当に嬉しそうでしたね」

「あの写真、応接間と和室と寝室に飾ってるんですよ」

「あら、そうなんですね」


 馴染みのスポーツ紙のカメラマンに頼み、わざわざパネルにしてもらった物を送ってもらった慎一郎は得意満面だったようだ。


「慎一郎調教師(せんせい)、本当に嬉しそうだな」

「良いジィジですねぇ〜」

「デレデレジィジだよな」


 鈴掛達は近江牛のすき焼きと特上寿司を堪能しながら、日本酒をチビチビやりながら孫話しに花を咲かせる祖父二人を見る。


 主役の凱央はというとケーキに手を伸ばしながら、『クレクレ』アピールをしている。


「ンマンマンマンマンマンマァ〜」

「激しいな、おい」

「ちょっと凱央〜」


 身を乗り出してテーブルをペチペチとし、ベルトで繋がれた椅子ごと立ち上がるという暴挙に、雄太と春香がテーブルの上の食器などを避けまくっていた。


「余程ケーキが食べたいんだと思うよ……」

「仕方ない。取り分けてやるか……」


 ケーキとイチゴを小さくカットして、凱央用の皿に乗せてやると、右手にフォークを持っているにも関わらず、ムンズと左手でイチゴを掴み口に運んだ。


「ンマンマァ〜」

「凱央、フォークの意味は……」

「野生児だな、凱央」


 口の周りに生クリームをつけながら、イチゴをマクマクと食べ続ける凱央を皆が笑って見ている。


「イチゴ好きは春香に似たんだな……」

「うん……。そうかも知れない……」


 腹が膨れるまでイチゴを食べ、超絶ご機嫌な主役の凱央だった。





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