557話
12月24日(月曜日)
雄太がG1を立て続けに獲り、凱央が
一歳の誕生日を迎えたクリスマスイヴ。
「えっと……これでよし」
春香が自分の誕生日以上に楽しそうなのは母としての気持ちがあるからだろう。
大きな画用紙には準備する事が事細やかに書かれていて、終わったものから赤いマジックで消してある。
(本当、嬉しそうなんだよな)
いつも使っているリビングテーブルをしまい、大きなテーブルを運び入れながら、楽しそうにアレコレ忙しく動いている春香を見る。
おぶわれている凱央は、時折ジャンプするかのように体を上下している。
「凱央、あんまり激しく動いたらママが疲れちゃうだろ?」
「ン? パッパァ〜」
雄太に声をかけられ、更に激しくグングンと動く凱央に呆れたように笑う。
「暴れんなって声かけたら暴れるんだもんなぁ……」
「凱央はパパがいるのが嬉しいんだもんねぇ〜」
テーブルを設置した雄太がキッチンに入り、凱央の頭を撫でる。
「ンダァ〜、パッパ〜」
「春香、一回凱央を下ろしたほうが良いぞ。これ以上、背中で暴れられたら疲れるだろ」
「え? あ〜。そうしようかな。肩への負担がすごいんだよねぇ〜」
雄太が凱央を支えると、春香がおぶい紐を緩める。フゥと息を吐いた春香が椅子を引いて腰かける。
「パッパ〜パッパ〜」
雄太に抱かれた凱央は、満面の笑みで体を動かしている。
その時、インターホンが鳴った。立っていた雄太がモニターを確認すると純也が立っていて、手を振っている。
「お、良いところに」
雄太は門扉の鍵の解除ボタンを押して、玄関へと向かった。ドアを開けると、純也は大きな大根と白菜を抱えていた。
「どうしたんだ、それ……?」
「父ちゃんと母ちゃんが畑で採れたから雄太ん家にもってってやれって」
「ありがたいな」
純也の父母にとって、雄太は息子の幼馴染み。G1騎手になっても、昔と変わらずに可愛がってくれている。
春香と凱央が散歩がてら、純也の実家にいってマッサージをしている事もあり、庭の隅で育てた野菜を差し入れしてくれているのだ。
「ン〜ン〜」
雄太に抱かれている凱央が靴を脱ごうとしてる純也に手を伸ばす。
「へ? あ、もしかして俺と遊ぼうってか?」
「そうじゃないか? ほら、凱央。純也おじちゃんに遊んでもらえ」
「誰がおじちゃんだっ‼ 兄ちゃんだっ‼ に・い・ちゃ・んっ‼」
純也はウガウガと文句を言いながらも、凱央に両手を伸ばす。
「あ、ウッドデッキにブランコあるぞ」
「へ? ブランコ?」
「ああ。座るトコがベンチみたいになってるデカいのが置いてある」
「へぇ〜。んじゃ、ブランコで遊ぶか、凱央」
「ウキャウ〜」
ちゃんと純也の言う事が分かった凱央は、純也の腕に抱かれながら大きく体を揺らす。
「そっか。よしよし。雄太、凱央の上着持ってきてやってくれ」
「ああ。ウッドデッキのほうに回ってくれ。俺は、大根と白菜をキッチンに持っていくから」
「OK〜」
純也は脱ぎかけた靴を履きなおし、凱央を抱っこしてウッドデッキ側へと向かった。雄太は大きな大根と白菜をキッチンへ運び、凱央の上着を持ちウッドデッキへ出た。
凱央にサッと上着を着せると、純也はブランコに腰かけた。揺らし始めると凱央がキャッキャとはしゃぐ。
「おぉ〜。良いな、このブランコ」
「だろ? これな、馬主の坂野さんと大河内さんと月城さんが合同で贈ってくれたんだよ。凱央の一歳の誕生日のお祝いしたいって言ってくれてさ」
「……馬主からのプレゼントって。凱央、お前今から期待されまくりだな」
三人の馬主達が何かにつけ春香を甘やかしたがっていのは、雄太だけでなく、慎一郎達や直樹達も知っている。
一人ずつだとプレゼント合戦になり高額なのは困ると遠慮していた春香に『一度だけで良いから』とお願いしまくってプレゼントされたブランコ。
「ほら、いくぞぉ〜」
「ウキャウ〜ウキャウ〜」
大きく揺らしてもらい、大歓声を上げる凱央を純也に任せて雄太はパーティーの準備に戻った。




