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君と駆ける······  作者: 志賀 沙奈絵


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543話


 10月29日(月曜日)


「雄太くん。クリスマスツリーの飾り付けしない?」

「あ〜。もう11月が目の前だもんな」

「うん。電球がピカピカしたら凱央が喜ぶと思うんだよね」

「確かに」


 大馬主である月城から贈られたモミの木は、ウッドデッキの隅に置かれている。ウッドデッキでバーベキューをしたりする時に必要になるだろうと言う事もあり、屋外コンセントをつけてもらっていたからだ。


「前の家は二階の窓から延長線で電球点けてたから、隙間風が酷かったしな」

「だねぇ〜」


 防犯面でも鍵が締められないのは雄太には心配だったから、屋外コンセントは絶対に必要だと思ったのだ。


 春香はウキウキとしながら階段下の物入れに行き、ツリーの飾りをしまっていた箱を取り出す。


 雄太や春香が楽しそうにしているのが伝わるのか、凱央もご機嫌でハイハイをしていた。


「ん〜。ベビーウォーカーでウッドデッキに出たら寒いか……。だからといってベビーカー……。凱央がはしゃいでグラグラしたりしたらヤバいよな……。最近、凱央のパワーは半端ないしな……」


 雄太は、凱央を屋内に一人にするのはどうなのだろうと悩んでいた。


「おんぶするにしても、もうかなり重いよな? 九キロ近いんだっけ……。けど、春香は家事してる時とかおんぶしてるよな? なら、俺でも大丈夫だろ」


 リビングの棚に置いてあるおぶい紐を手にして凱央を見ると、さっきまでダイニングにいたはずの凱央はリビングのほうに移動していた。


(どんだけ速いんだよぉ……)

「凱央、おいで」

「ン〜。パッパ」


 テッテッテとハイハイして近寄ってきた凱央をおぶい紐でおんぶをしようとした。


「えっと……足をここに……と……。よし、これでおぶえる……フォッ⁉ 重っ‼」


 ギリギリと肩に食い込むおぶい紐。持ち上げようとすると凱央が足をバタつかせる。


「ちょっ‼ 凱央、暴れたら危ないか……ら……。グハッ‼」

「雄太くん……。何してるの……?」


 凱央を半分背負いながら背中を反らせ、ブリッジしかけのような状態で顔を歪ませている雄太を春香が笑いを堪えた顔で見ていた。


「外……行くなら……おんぶが良い……って……。春香……助けて……くれ……」


 春香は笑いながら凱央を抱き上げた。


「ど……どうなるかと思ったぁ……」

「プッ。凄く変な体勢でとまっちゃってたね」

「笑うなよぉ〜」

「フフフ。ほら、凱央。おんぶしてお外に行くよ」


 春香はヒョイとおんぶをして、ベビーケープをかける。


「へ?」

「ん? なぁに?」

「お……重くないのか……?」

「え? 重いよ?」

「何で、そんなに軽々おんぶ出来るんだ?」

「慣れだよ、慣れ」


 春香はニコニコと笑っている。


(母親って……凄いんだな……)


 抱っこはいつもしていた。寝かしつけをしていて、『重くなったな』とは思っていた。


 ただ、おんぶがこれだけの負担になるとは知らなかったのだ。


(春香を抱き上げた時より重く感じるのは、あの細い紐の所為なんだな)


 後で肩もみでもしてやろうと思いながらウッドデッキに出る。一つ一つクリスマスツリーの飾り付けを始めると、凱央が嬉しそうにはしゃぎだす。


「ウキャウ〜。ダダダァ〜」

「凱央、まだまだこれからだよ〜。キラキラして、ピカピカになるんだからね」

「アムゥ〜。オゥオ〜」


 次から次と飾り付け、モミの木が成長した分長いほうが良いと買ってきた電球を回しつけた。


「はい。雄太くん、てっぺんの星お願いね」

「ああ」


 大きな星を手渡され取り付ける。ふと、春香を見ると手を合せて拝んでいた。


「春香?」

「あ……ついお祈りしちゃった。えへへ」

「ははは。ほら、凱央。電球点けるぞ」


 春香の頭を撫でてから、コンセントにプラグを挿す。パッと電球が光り、しばらくするとチカチカと点滅を始めた。


「ウキャウ〜。アゥ〜」

「綺麗だね、凱央」

(本当、子供みたいに笑うんだからな。さっきの母の顔はどこ行ったんだよ)


 はしゃぐ二人を見て、苦笑いしながらも心がポカポカと温かくなる雄太だった。





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