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君と駆ける······  作者: 志賀 沙奈絵


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511話


 藤森神社に着いた春香は、凱央を抱っこ紐を使い抱っこをした。そして、雄太と手をつないで、ゆっくりと歩き出す。


(やっぱり雄太くんを見る人が多いなぁ〜)


 駐車場に車を停め降りた時から、チラチラと視線を向ける人や振り返って見る人もいた。


「抱っこして歩くし、足元に気をつけてな?」

「うん」


 春香は優しく声をかけてくれる雄太をチラリと見上げる。初めて訪れた時より大人っぽく見える雄太に頬が赤くなった。


(格好良いなぁ……。観光客っぽい女の子達も雄太くんを見てる。そりゃ見ちゃうよね)

「ん? どうかした?」

「ううん。何でもないよ」

「そうか?」


 春香は誤魔化したが、キュッとつないだ手に力を込めた。


(雄太くんは私の旦那様……。たった一人の大切な大切な男性ひと。雄太くんの隣は譲れないもん)


 そんな春香を見て、雄太は心当たりがあり周りを見回す。チラチラと自分達のほうを見ているのは家族連れもいるが、観光客とおぼしき若い女の子達もいる。


(はは〜ん。やっぱりヤキモチ焼いてるな。本当、可愛い妬きかただよ)


 笑いを堪えて、春香の手をキュッと握り返した。春香は、その意味に気づいて苦笑いを浮かべた。


(妬いてるのバレちゃってる……。恥ずかしいな)


 さらに頬が赤くなった春香と本殿に向かい並んで手を合わせる。


(無事、G1騎手になれました。ありがとうございました)

(雄太くんを守っていただきありがとうございました)


 大きな怪我もなく、いくつものG1を勝てた事の報告を済ませた。

 

 雄太は春香からのプレゼントのカメラで景色を撮ったり、凱央を撮っていた。


「紫陽花、綺麗だな」

「うん。あの時と変わらないね」


 二人で歩いた時と変わらない色とりどりの紫陽花をゆっくりと見ながら歩いていく。


 ふと、雄太が足を止めた。視線の先には、紫陽花の写真を撮っている男性がいた。


「ちょっと待ってて」


 雄太は春香の手を離し、その男性に近づいた。


 本格的なカメラを持った五十代らしき男性と雄太は何やら話して、春香の傍に戻ってきた。


「どうしたの?」

「写真撮ってもらえないかお願いしてきたんだ」


 そう言って、雄太は紫陽花の咲き誇る所へ春香の手を取りを導いた。


「すみません。お願いします」


 雄太はそう言ってカメラを手渡した。男性はにこやかに微笑んで頷いた。


「凱央、俺が抱っこするから」

「うん」


 春香は抱っこ紐を外し、雄太は凱央を抱っこして三人で並ぶと男性は何度かシャッターを切る。


「ありがとうございました」

「いいえ。あの……騎手の鷹羽さんですよね? 握手をお願いしてもよろしいですか?」

「はい」


 写真を撮ってくれた男性にお礼を言って、また散策を続けた。


「ねぇ、雄太くん」

「ん?」

「さっきの男性ひとに写真をお願いしたのはどうして?」

「あ〜。真剣に紫陽花の写真を撮ってて、良いカメラ持ってる人だなぁ〜って思ったんだよ。ああ言う人なら、良い写真を撮ってくれるだろうなって思ってさ」

「そうだったんだぁ〜」


 観光客と言う雰囲気はなく、おそらく趣味で写真を撮っている人物だと言った感じだと春香も思った。


 もしかすると写真家かも知れないが、雄太にも春香にも分からなかった。


 雄太を騎手の鷹羽雄太と知ってはいたようだったが、落ち着いた雰囲気で好意を持てる人だったと二人は思いながら、ゆっくりとした時間を過ごした。


「ほら、凱央。綺麗な花だろ?」

「アゥ〜」


 凱央は抱っこ紐を外されたまま、雄太に大人しく抱かれていた。


 雄太は有名にはなったが、必要以上に騒がれる事を好んではいない。家族と過ごす時間を大切にしたいと思うから、あの落ち着いた男性に写真をお願いしたのだろうと春香は思った。


(きっと良い思い出の写真を撮ってもらえたよね)


 振り返ると男性は、また真剣な顔でファインダーを覗いていた。


「春香、そろそろ食事に行こう」

「うん」


 雄太は右腕で凱央を抱き、左手で春香の手を取り歩き出した。





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