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君と駆ける······  作者: 志賀 沙奈絵


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506話

 

 寝る前のマッサージをしてもらいながら、心は東京優駿ダービーで勝てなかった事でいっぱいになる。


「ダービー勝ちたいなぁ……」

「うん。雄太くんが一番獲りたいのってダービーなんだよね」

「やっぱり、ダービーは特別だって思ってるんだよな」


 子供の頃から憧れていたダービー。いつか一着になって、ダービージョッキーの称号を得たいと、ずっとずっと思っていた。


 実際出てみて、ダービーを勝つ事がいかに難しいかと思い知らされた。


(勝ちたい……。ダービージョッキーになりたい……)


 付き合い始めた頃から、何度もダービーへの思いを春香に熱く語っていた。


 『俺、いつか絶対ダービーで優勝する。一年でも早く、ダービージョッキーって言われるようになりたいんだ』


 G1を獲る事も夢ではあったが、やはりダービーを獲るのが一番の目標である。


 それは、春香もよく理解している。


「私も、雄太くんがダービーを勝つの楽しみにしてるよ。直接見たいなぁ〜」

「そうだな。俺も春香に見ていて欲しい。凱央にも」

「うん。格好良いパパを見せてあげて欲しいよ」


 来年、ダービーを獲っても凱央の記憶には残らないだろう。それでも、ダービー馬と一緒に写真を撮ってもらえば、一生の記念になる。


「よし、毎年ダービーに出る時は関係者席で見てくれ。そしたら、一緒に口取り写真撮ってもらえるだろ? 関係者席なら、人混みで大変なめに合わなくてすむしさ」

「そっかぁ〜。私、いつもゴール板のところで見たいって思ってたけど、子供連れでG1のゴール板前は無理だもんね」


 G1の開催日は、朝から何万もの人が競馬場に訪れる。レースによっては十万人を超える。


 小さな子供連れでは、ゴール前どころか場内を移動するのも大変なのだ。


「そう言っても、やっぱり春香はゴール前で見たいんだろ?」

「えへへ」


 いたずらっぽく訊かれ、春香は苦笑いを浮かべる。


 何度か競馬場に訪れたが、ゴール前で見られたのは、雄太の初騎乗の時だけ。重賞になると人が多過ぎて、一度トイレに行くと元のところに戻るのでさえ大変なのだ。


「大声で応援出来ないからって関係者席に行きたくないって言ってたけど、凱央の事を考えたら……な?」

「うん」


 ベビーカーで観戦は大変だろう。だからといって抱っこ紐を使用しても、オムツだのなんだの荷物を持っていかなければならないのは大変で済まないと想像出来る。


 春香一人で競馬場に行くとすれば凱央を誰かしらに預けなければならない。


「凱央を抱っこして口取り写真……。うん。想像したらワクワクするな」

「雄太くんの女性ファンのかたがたはモヤモヤしちゃうかもね」

「そっかぁ? 俺、結婚してるのも、子供がいるのも公言してるぞ? 婚約会見も、入籍会見もしたしさ。結婚式なんて生中継したんだし」


 結婚していても、子供がいても、熱狂的ファンには関係がないのだと思っていないところは鈍い雄太らしい。


 この場に純也や梅野がいたら、総ツッコミを受けるだろう事をサラリと言う。


 梅野が女性ファンの彼氏からいちゃもんをつけられたのは『独身だからだろう』と思っているぐらいだ。


「でも、毎日のようにラブレターもらってるじゃない?」

「ラブレターじゃなくて、ファンレターって言ってくれよぉ〜」


 確かに中には、『愛してます』『結婚してください』などと書かれているものもある。


 何度かヌード写真が同封されていた事があって、雄太が唖然としてしまった事があった。


 そう言う時に限って、春香に見られてしまい、場が凍り付いた事は一度や二度ではない。


(手紙の検閲して欲しいけど、数が多いからって断られそうだしなぁ……。それでも、プレゼントの中を確認してから渡してもらえるようになったのは助かったけど……)


 使用済みの下着や際どいランジェリーなどを贈ってくる女性の気持ちが分からず、頭を悩ませた事も一度や二度どころではなかった。


 嫌がらせの手紙であれなんであれ、雄太を悩ませている事だけは確かである。





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