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君と駆ける······  作者: 志賀 沙奈絵


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494話


 雄太と鈴掛がでかけた後、ポストの郵便物などを回収した春香は違和感を感じた。


 封筒が届くのは珍しくはない。だが、シンプルな白い封筒がいくつも入っていたのだ。


 切手が貼っておらず、表書きが異質だった。定規を使って書いたような文字の物や新聞や雑誌の文字の切り抜きが貼り付けてある物の文字が意味が分からない物ばかり。


(何……これ……。ドロボウヤロウ……? 泥棒って誰の事……? ヌスット……? 盗っ人って……誰の事……?)


 心臓がドキドキと早鐘を打つ。手にしていた郵便物を取り落としそうになる。


 その時、インターホンが鳴った。封筒を見る事に集中していた春香はビクリと体を震わせた。


「鷹羽さぁ〜ん、郵便です」


 聞き覚えのある郵便配達員の声がして、春香はホッと息を吐くと門扉の鍵を開けた。


「あ……奥さん。あのですね……」

「はい。あ、判子ハンコが要る物あります?」

「いえ、そうじゃなくて……。切手が貼っていない物がありまして……」


 顔馴染みの配達員は、困ったような顔をして紙紐で束ねた郵便物を差し出した。


「え? これ……全部ですか……?」

「そうなんです。しかも、宛名が変なんですよ……」


 配達員が差し出した一番上の物を見ると、春香が手にしている物と同じような新聞などの切り貼りをした物だった。


 春香は言い知れぬ恐怖感にゾワッと鳥肌が立った。


「料金不足だし、受け取り拒否をしても良いですよ? どう見ても普通じゃないですし……」


 直樹と同年代ぐらいの配達員は、優しい声で言ってくれる。誰かからの手紙ならば料金を払って受け取れば良いが、どう見ても普通ではない封書が複数なのだ。

 

「そのよう……ですね……」

「しかも、百通近くあるんですよ。受け取っていただくにしても料金が半端ないですし……」

「……分かりました。では、お手数ですが持って帰っていただけます?」

「ええ。では」


 春香がペコリと頭を下げると、配達員はフゥと息を吐いた。


 そして、バイクに跨り、次の配達先に向かう。


(……ドラマとかの脅迫状とかで見るヤツだよなぁ……、これ……)


 中途半端な住所でも届け先が判断出来る物は届けられるが、あまりにも不自然な封書はかなりの量が郵便局に置かれていたのだ。


 雄太の家には、電話が二台ある。だが、電話帳への記載はしていない。だとしても、ある程度の住所は新聞や雑誌の掲載記事で分かってしまっていた。


(だからなんだろうな……。それにしても、中身は分からないがロクでもないのは分かるぞ……。内容によっては警察に被害届を出せるんだろうけど……)


 時折郵便物を手渡しする時、にこやかに『ありがとうございます』『お気をつけて』と声をかけてくれる春香の戸惑ったような怯えたような顔が気になった。


(俺がどうする事も出来ないんだけど……な)




 配達員を見送った春香は、郵便物を手に家に入った。


 ベビーベッドの中を覗き込むと、凱央はスヤスヤと眠っていた。


(……ポストに入ってたり……郵便として出されてたり……。何が起きてるの……? 何の手紙なんだろう……?)


 配達員に見せられた封筒には『鷹羽雄太』と切り抜きが貼られていた。


 つまり、ポストに入っていた封書も雄太宛という事だろうと推測が出来る。


(雄太くんが泥棒? 盗っ人? あり得ない。雄太くんは、そんな事しない。しかも、配達員さんは百通近くって言ってた……。そんなたくさんの人に泥棒って言われるなんて事、雄太くんがする訳ない。雄太くんは、そんな人じゃない)


 春香は、一通ずつテーブルに封筒を並べた。


 ポストに入っていた雄太宛だと思われる封書は十三通。


(これ……私が開けて良いのかな……? でも、雄太くん宛だと思う物だし……)


 相談するにしても、雄太はもう調整ルームに向かってしまっている。


(お義父さんに相談してみる……? けど……明日はレースあるし……。とりあえずしまっておこう……)


 春香は、封筒を空き箱にしまい、クローゼットの棚にしまった。





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