表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
君と駆ける······  作者: 志賀 沙奈絵


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

469/738

465話


 翌日、調教を終えた雄太は風呂に入り、鷹羽の家に向かった。




「父さん、母さん。ただいま」

「こんにちは」


 慎一郎もトレセンから戻ってきていて、リビングでくつろいでいた。


「お義父さん、お義母さん。アルバムを持ってきました。それと、これ良かったら召し上がってください」


 春香が、アルバムの入った紙袋とビニール袋を差し出した。


「あら、ありがとう」

「アルバム待ってたんだ。で、今日のは何だね?」


 理保は春香から受け取った袋の中から、次々とタッパを取り出す。慎一郎はアルバムを大切そうに受け取る。


「これが、牛肉の大和煮。それと、菜の花の辛子和えと卯の花です」

「あら、良いわね」


 春香が笑顔で答えると、慎一郎が物欲しそうな顔で理保を見た。それに気づいた理保と雄太が呆れたような顔をする。


「あなた……」

「父さんって……そんなに食い意地張ってたか……?」


 二人に言われ、慎一郎は恨みがましい目をしながら反論をする。


「雄太、お前失礼だな。味見だ、味見」


 理保は、笑いながら小皿などを出そうと食器棚に行こうとして、雄太が凱央を抱っこしたままなのに気がついた。


「和室に行きましょうか? ここだと、ずっと凱央を抱っこしてなきゃならないし」

「ん? あ、そうだな。理保、ストーブを点けてきてやりなさい」


 理保は和室へ向かい、慎一郎は食器棚を開け小皿などを取り出した。


 その様子に、雄太は唖然として眺めていた。それに気づいた慎一郎が不思議そうな顔をする。


「何だ?」

「否……。縦の物を横にもしない父さんがな……って思ってさ」

「お前……つくづく失礼だな」


 不機嫌そうな顔をした慎一郎は、失礼な事を平然と言う雄太を見ながら言った。




 和室が温まり、雄太達は和室に移動した。


 慎一郎のゴロ寝用の長座布団に凱央を寝かせて、炬燵に入った。


「で、話とは?」


 慎一郎は、タッパを開けて取り箸で小皿に菜の花の辛子和えを盛る。


「ああ。ここの風呂場を新しくしようと思うんだ」

「え? 風呂をか?」


 雄太は、リフォームの説明をしていく。


「でな、風呂場を改装している間はうちに来てくれたら良いから」

「ぜひ、いらしてください」


 雄太達に言われて、慎一郎達は顔を見合わせた。


「もしかして……嫌なのか? リフォームが? うちに来る事が?」


 焦った雄太が訊くと、慎一郎は首を横に振った。


「違う。そうじゃない」

「じゃあ何だよ?」

「うちの湯船は昔のだし、入りにくいだろう? だから、近いうちに取り替えたほうが良いかなと理保と話してたんだ」

「そうなのか? なら、良いんだよな?」


 雄太が確認すると、理保が心配そうな顔で雄太達を見た。


「その……ね。あなた達、家を建てたばかりでしょう?」

「大丈夫だよ。春香も心配ないって言ってるし」

「春香さん……」


 雄太に訊ねた理保は、ゆっくりと春香を見た。


「そんな事を気になさらないでください。雄太くん、頑張ってくれてますから」

「そうだよ。風呂のリフォームも、俺達の家に来る事も嫌じゃないなら、さ」


 慎一郎と理保は、息子夫婦の申し出をありがたく受ける事にした。


 ただ、騎手と調教師では起きる時間が違っているから、風呂は雄太の家で入り自宅で休むと言う事にした。


「うん、ならそう言う事で。リフォーム会社に来てもらえるように連絡しておくから。遠慮して変に安いのにしないでくれよな? 金額なんて気にせずに、父さんと母さんが良いと思う物を注文してくれて良いから」

「分かった。ありがとう、雄太。ありがとう春香さん」

「ありがとう。雄太、春香さん」


 慎一郎と理保は、雄太と春香の心遣いが嬉しく思った。


 後日、今後の事も考えてしっかりリフォーム業者と相談をして、滑りにくい床や各所に手摺りをつけてもらうようにした。


 慎一郎と理保の要望は雄太にも伝えられた。


(うん。これなら大丈夫だよな)


 初めての大きな親孝行に、ホッとしていた雄太だった。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ