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君と駆ける······  作者: 志賀 沙奈絵


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458話


 その夜、純也と梅野は雄太宅で夕飯を食べ寮へと戻った。


「やっぱり皆で囲む鍋は良いなぁ〜」

「そうすっね。俺、野菜あんま好きじゃないけど、雄太ん家で飯ご馳走になると食えるんすよね」

「何か分かるぞぉ〜。それに鍋は大人数のほうが良いもんなぁ〜」

「そうっすね」


 純也は自室に戻らず、梅野の部屋でコーヒーを淹れてもらいくつろいでいた。


「んで……す」


 純也が話し出した瞬間、部屋をノックする音がした。


「開いてますよぉ〜」


 梅野がドアのほうを向いて言うと、開いたドアから顔をのぞかせたかのは鈴掛だった。


 鈴掛の話をしようとしていた純也は、驚いて大きく息を吸い込んだ所為かむせてしまった。


「ゴホォッ‼ ゲホッ‼」

「え? お……おい、大丈夫かぁ〜?」


 梅野は驚き、純也の背中を擦ってやる。


「ゲホッ‼ ンンッ‼」

「鈴掛さん、冷蔵庫に水が入ってるんで汲んでやってください」


 鈴掛はコップに冷蔵庫に入っていた水を汲み、純也に手渡した。


「おい、大丈夫か?」


 少し咳き込むのがマシになった純也は、鈴掛の手からコップを受け取りゴクゴクと飲み干した。


「ケフッ‼ ンンッ‼ あ……ありがとうっす。何か器官に入った……みたいっす」

「まぁ、たまにあるけど……」


 涙目の純也が言うと、鈴掛はドカッと座り純也をジッと見た。


「……何すか?」

「ん〜。何で……かなぁ……」


 鈴掛はバリバリと頭を掻いた。眉間には皺が寄り、悩んでいるようにしか見えなかった。


「どうかしたんですかぁ〜?」


 また元嫁関係の事かと思って梅野は訊ねた。


「ん〜。あのさ、娘がな……」


 そこまで言った後、またチラリと純也に視線を送る。


「へ? なんすか?」

「娘が……お前のファンだって言うんだよな」

「はいぃ〜〜〜〜〜っ⁉ お……俺っすかぁ〜?」


 純也が驚いて大きな声を上げ、梅野は鈴掛の分のコーヒーカップを手にして固まった。


「週末中山だったから、レース終わりに娘に会って飯食ってたんだけど、その時に純也のファンだから会いたいって言われてさぁ〜」

「は……はぁ……」


 溜め息混じりの鈴掛に、ヒクヒクと引きつりながら純也は頷いた。


「んでな、純也がいつ東京か中山で騎乗するのか訊いて欲しいって言われてさぁ……」

「俺が関東で騎乗があったら会いたいって事っすか……?」

「ああ……」


 純也が恐る恐る訊ねる。


「お嬢さんが純也のファンとかぁ……。どこが良いんですかねぇ……」


 梅野はそう言って、テーブルにコーヒーカップを置いて純也をチラ見した。


「梅野さん……。何気に酷いっす……」

「え゙。あ、うん。純也もイケメンだぞぉ〜? あはは……」

「スンゲェ〜、笑って誤魔化してるっすよね……?」

「き……気にすんなってぇ〜」


 膨れっ面をして不平を漏らす純也に、梅野は苦笑いを浮かべていた。


「格好良い……んだとよ……。真っ赤な髪でチャラそうに見えるのに、真剣な顔をしてるのが良いとか言ってた……」

「は……はい……」


 鈴掛が苦虫を噛み潰したような顔で言い、純也はヒクヒクと引きつりながら返事をする。


「えっと……あえて訊きますけどぉ……。純也なのが問題なんですかぁ〜?」

「問題ってなんすかぁ〜っ⁉」

「問題だろぉ〜?」


 純也がキャンキャンと梅野に縋る。その二人を見て、鈴掛が深い深い溜め息を吐く。


「何で純也なんだかなぁ〜」

「ヒドっ‼」


 鈴掛の遠慮ない言葉に、純也は思わずツッコミを入れた。


「どうせなら、俺のファンになってくれたら良いのにぃ〜」

「…………」

「何ですかぁ〜。その沈黙はぁ〜」


 鈴掛の親心としては、娘が異性を格好良いと言うのは、相手が誰であろうと嫌なものなのだろう。


「そりゃ、梅野さんは俳優とかモデルとかでも出来そうなイケメンだってのは分かりますけど、俺だって負けてないっすからね?」

「お前、それって褒めてんのぉ〜?」


 ワチャワチャとジャレている二人を見て、再び鈴掛は溜め息を吐いていた。




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