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君と駆ける······  作者: 志賀 沙奈絵


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439話


 2月4日(日曜日)


 午前中、春香は凱央と直樹と里美と一緒に新居にいた。引っ越し屋が新居に荷物を届けてくれた後、直樹達の手を借りて簡単に片付けをした。


「お父さん、お母さん。ありがとう」

「良いさ。春と凱央の為だしな」

「新居も見たかったしね」

「うん」


 直樹と里美は、真新しいベビーベッドを組み立ててくれて、マンションから持ってきたベビー布団を敷いて整えてくれた。


「ほら、凱央〜。新しいお家だよ」

「アゥ〜」


 チャイルドシートに乗せる時は、少し嫌そうな顔をしていた凱央だが、ベビーベッドに寝かせると、ベッドメリーを見ながら手を動かしてご機嫌になった。


「お父さん、お母さん。家の中、見てきて」

「ん? そうだな。春のお薦めはどこだ?」

「んとね。リビングもだけど、地下のコレクションルームとお風呂はぜひ見て欲しいな」

「ふふふ。分かったわ。とりあえず全部見せてもらうわね」


 直樹と里美は、ゆっくりと家の中を探検気分で見て歩いた。


「へぇ……。木をふんだんに使ったって言ってたけど、クローゼットの中までこだわってるな。これは桐だろ?」

「ええ。ちゃんと衣類の事を考えたのね。これなら雄太くんの良いスーツや春香の着物も大丈夫そうね」

「そうだな。最初に良い物を建てれば長く気持ち良く住めるからって、かなりの出費をしたって言うのがよく分かるな」


 地下のコレクションルームは壁一面で、今後雄太のトロフィーなどが飾られれば壮観だろうなと思った。


 大きなテレビとビデオデッキが置かれていた。その前にはリラックス出来そうな大きな椅子がある。


(雄太がレース見返す為ってヤツだな。春は、やっぱり雄太に惚れまくりだな)


 直樹は春香がいかに雄太に愛情を注いでいるのかを感じながら、各部屋を見て回った。


 雄太の為に設けたマッサージルーム。大きな客間。広くゆっくりとした浴室。脱衣所も広々としていて、エアコンもつけてあった。


「脱衣所にエアコン?」

「お風呂上がりって、夏場は汗が止まらなくなるでしょ? 冬場は一気に体が冷えるから、大人だけでなく、赤ちゃんの凱央には良くないだろうって言ったのよ」

「あ〜。成る程な。里美らしいアドバイスがあったんだな」


 棚には、ベビーパウダーなど赤ちゃん用品も置いてあった。


「ここもだな……」

「何が?」

「リビングも廊下もだけど、窓が縦に細長いのが等間隔にあるなって思ってな。大きな窓が殆どないだろ? 明るいのは良いんだけど、変わった窓にしてるなって思ってさ」

「あ〜。この窓は雄太くんの希望ですって」


 里美が細長い窓に手をあてる。


「雄太の?」

「この窓の幅って、大人じゃ体を横にしても通り抜けられないのよ」

「……もしかして防犯対策?」

「そう。大きな一枚ガラスだと、強化ガラスでも侵入されそうだからって言ってたわ。それに耐震性を考えたら、壁部分がある方が良いって。だからって、窓がないのは嫌だって言ってたわ」


 春香は雄太の体やリラックス出来る家造りを考えていた。雄太は春香や凱央を守る家造りを考えていた。


「塀沿いの白い石みたいなのも防犯砂利にしてるし、防犯カメラもバッチリでセキュリティにも入ってるしね。出来る防犯対策はやり過ぎなぐらいやるんだって言ってたわよ」

(あいつ……)


 勝負の世界で生きているとは思えない柔らかな印象の雄太を思い出す。


(雄太も、春と似てて見た目で判断出来ないヤツだな。馬に乗ってる時とか、たまに大人びて見えるけどさ)


 レースの時、春香との付き合いを認めてくれと言った時、マスコミに堂々と交際宣言をした時など、大人の顔をした雄太を何度も見てきた。


 大切に育ててきた春香むすめが惚れて惚れて惚れ込んだ雄太おとこ


 普段から大切にしているのは分かってはいたが、自分が居ない時の事を考えた新居に春香と凱央への愛情が溢れている気がする。


(本当、侮れないヤツだよな)


 直樹は、今頃頑張っているだろうと思う雄太を思い出し、心の中でエールを送っていた。





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