表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
君と駆ける······  作者: 志賀 沙奈絵


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

379/750

375話


 披露宴が始まり、複数のテレビカメラは雄太と春香だけでなく、人気騎手を映している。


 カメラに気付いた梅野と純也がにこやかに手を振っている。テレビの画面を見ている女性ファンは喜んでいるだろう。


 撮影をOKしてくれた馬主達はにこやかにインタビューに答え、雄太達に祝福の言葉を贈っていた。


 仲人の辰野調教師夫妻も嬉しそうである。




「な……仲人っ⁉ わ……儂がか……?」

調教師せんせい以外に、仲人をお願いする方がおかしいかと思うんですけど……?」

調教師せんせいは、私達の事を見守ってくださっていたので、是非仲人をお願いしたいんですが……」


 雄太と春香に揃ってお願いされた辰野はどうしたものかと悩んだ。共に訪れていた慎一郎をチラリと見る。


「儂が雄太の仲人に……かぁ……?」

「辰野調教師(せんせい)よろしくお願いします。所属厩舎の調教師は親も同然ですから」


 慎一郎にまでお願いされては断れずに、辰野は頷いたのだった。




「辰野調教師(せんせい)さ、緊張してるよな」

「そりゃそうですよぉ〜」

「競馬場で見る時より緊張してるっすよね」


 鈴掛達三人は美味い酒と料理にホクホクしながら、披露宴を楽しんでいる。


「あぁ……。それにしても、春香ちゃん綺麗だな……」

「鈴掛さん、それ何回目ですかぁ〜?」

「マジ父親モードっすね」


 いつものように梅野達にからかわれても、ウルウルとした目で春香を見詰めている。


 芸能人の結婚式でよく見る背の高いド派手なケーキではなく、大きな長方形のウェディングケーキも雄太らしかった。ピンクのクリームで作ったバラとイチゴがたくさん乗っていた。


 純也が目をキラキラさせて、ケーキ入刀を見詰めている。


「あれ、食えるヤツっすよね?」

「ああ。俺達でも食えるような甘さ控え目らしいぞぉ〜。俺の分は純也にやるからなぁ〜」

「マジっすか? 梅野さん、今日もイケメンっす」


 梅野の言葉に純也が嬉しそうにガッツポーズをした。


 馴れ初めのスライドショーは、初めてのデートの時の写真から始まった。


「あ、あれって梅野さんの盗撮写真っすね」

「純也ぁ〜。盗撮って人聞きが悪いって言ったろぉ〜? 俺、泣いちゃうよぉ〜?」


 初デートで雄太が春香に乗馬を教えている写真を始め、あちこち出かけて撮影した写真。雄太の二十歳の誕生祝いやプロポーズをする事の決め手のカームと撮った写真。


 入籍日、結婚して初めて迎えた正月、そして、写真館で撮ったマタニティフォト。


 雄太と春香はニコニコと笑いながら話している。その姿を見て、直樹達はホッと息を吐いた。


「なぁ、里美。春を引き取って、あの子の心の闇が深いと改めて思った時は、こんな日が来るなんて想像も出来なかったな」

「そうね……。本当に良かったわ。初恋の人と結ばれたんてすもの」


 マッサージ師として働き始め、実績を積み、信頼を得て顧客となった財界の大物や馬主達が、直樹や重幸と同じように目を赤くし、笑いながら拍手を送っている。


「なぁ、理保。今日は、雄太がやけに大人に見えるな」

「そうですね。まだまだ子供だと言う歳に結婚をしたいなんて言い出すなんて、想像もしてませんでしたよね」

「結婚するんだなんて子供の戯言だと思ったのに、G1は獲るし、プロポーズしたと言うなんてな」


 ムキになっているだけだとタカを括っていた慎一郎は、凛々しい顔をして座っている雄太を見る。


 春香と結婚をしてからもG1も獲り、勝鞍を積み上げている。


(雄太は楽々と儂を越えていくのだろうな)


 今や春香の作る惣菜が届くのを心待ちにしているのだから、おかしなものだと慎一郎は思い、雄太の隣で笑っている春香を見る。


「本当に良い嫁をもらったな」

「ふふふ。もう直ぐ、孫にも会えますしね」

「楽しみだなぁ〜。男でも女でも良いぞ。元気で生まれてくれたら嬉しいな」


 ふっくらとした春香の腹を見詰めていると、孫を心待ちにしている自分に気付き、グイッと日本酒を飲み干し笑った。





評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ