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君と駆ける······  作者: 志賀 沙奈絵


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369話


 9月に入り、更に大きくなった春香の腹を、雄太は優しく撫でている。


「ポコポコも力強くなってきたよな」

「うん。検診でも順調だって言われたよ」

「そっか。来月は結婚式だぞ。大きくなったら、最高に綺麗なママの写真を見せてやるからなぁ〜?」

「は……恥ずかしいんだけどぉ……」




 雄太のデレデレっぷりは春香だけでなく赤ん坊にも発揮されていて、休日にマタニティフォトを撮りに行こうと出かけたぐらいだった。


 妊娠中の春香を置いて地方遠征をし、更にはアメリカにまで行っていた埋め合わせのつもりもあった。


(最近、全くデート出来てないから写真を撮れてないんだよな。子供が大きくなったら、これを見せてやろう)


 雄太も一緒にと言われて、一緒に写真に納まる。


「鷹羽さん、この写真をウィンドウに飾らせてもらっても良いでしょうか?」

「え? あ〜。外に飾ってあるヤツみたいにですか?」


 雄太は少し悩んだ。春香と雄太との写真なら良いのだが、春香はマタニティフォトと言う事もあり、腹を出している。


(春香の腹を他人が見る……。ん〜)


 春香の肌を他人……特に男が見ると言うのは、雄太としては許容出来なかった。


 ただ、小さな個人の写真館は、カメラの普及で経営が苦しくなっていると聞いていたから、雄太達の写真を飾る事で客が増えるのではないかと思ったのだ。


「ちょっと待ってもらえますか? 妻と相談しますので」


 撮影が終わり、着換えている春香に話をした。


「春香、どう思う?」

「う〜ん。とうしよう?」

「俺達の写真を飾る事で客足が伸びるとかおこがましいかも知れないけど、少しでも客が来てもらえるならって、思っちゃったんだよ」


 雄太の優しさが春香に伝わってくる。


「そうだね。お腹とは言え肌が見えてるって言うのは気にはなるけど、マタニティフォトなんだから良いかな」


 二人は、ウィンドウに写真を飾る事を了承した。


 写真館側の喜びようは雄太の想像以上で、料金を無料にするとまで言い出した。


「それは駄目です。俺達は、無料にしてもらいたくて写真を飾っても良いと言った訳じゃないんですから。ちゃんと、料金は受け取ってください」


 この先、何か写真を残したい時に、また利用したいからと、雄太は正規の料金を支払った。


 『これだけはサービスさせて欲しい』と言われ、大きな写真用の額を選んだ。それ以外は普通サイズの写真にしてもらったのだ。


 その中の一枚を雄太はミニアルバムに入れて、調整ルームに持って行っていた。


「この写真はミニアルバムの1ページ目に入れてるんだ。春香と子供の為に頑張るぞって思うんだよ」

「嬉しいけど、雄太くんがミニアルバムを調整ルームに持って行ってるのって、誰か知ってたりする?」

「へ? 皆知ってるぞ?」


 雄太の部屋で一緒に寝ている純也だけでなく、鈴掛と梅野は勿論、先輩騎手達も、数は少ない後輩にも知られている。


「鷹羽さんって愛妻家なんですね」

「可愛い奥さんですよね」


 後輩騎手達に春香を褒められ嬉しくなり、自慢気に写真を見せていて純也達に呆れられた。


「そりゃ、雄太が春さんにベタ惚れなのは知ってるけど、まさか後輩にまで写真見せびらかすとは思ってなかったぞ……」


 そう言われても二ヘラと笑っている雄太を見た後輩騎手達が『鷹羽さんは、奥さんの話をしている時は馬上とは全く違う顔をしている』と噂をしている事を雄太は知らなかった。


「あ、そろそろ出かけないと駄目なんじゃない?」

「ああ。阪神だし、日曜日は早く帰れるからな?」


 雄太はソファーの横に置いていたバッグを手に立ち上がった。


「いってくるな」

「いっらっしゃい。気を付けて頑張ってね」


 アメリカから戻った雄太は、前と変わらず早朝からトレセンで調教をして、騎乗依頼をもらい、トレーニングをしている。


 金曜日になれば、各競馬場に赴き調整ルームに入り、土日にレースに出る。


 そんな日常に戻った雄太は、春香の誕生日が近付いてきてウキウキしていた。





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