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君と駆ける······  作者: 志賀 沙奈絵


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360話


 小倉に着いた雄太は、真っ先に春香に電話を入れた。


「小倉に着いたよ。変わりはない?」

『うん。大丈夫だよ』

「調整ルームに入るまで毎日電話するからな? 淋しくなったら東雲に帰るんだぞ?」

『ありがとう。雄太くん、大好き』


 耳元で聞こえる『大好き』の言葉が嬉しくて顔が緩む。


「俺も大好きだ。世界一好きだからな」


 宿舎には、たくさんの先輩騎手がいるが、雄太は嬉しさから、つい答えていた。


「いやぁ〜。ラブラブだねぇ〜」

「ふおっ⁉」


 いつの間にか、真後ろに梅野が立っていた。そして、雄太の耳元で囁く。


『どうしたの? もしもし? 雄太くん?』

「あ……。な……何でもないよ」


 梅野は、雄太をバックハグしながらニヤニヤと笑っている。


「じゃあ、また電話するからな」

『うん。またね』


 受話器を置いた雄太に、梅野が抱き着いたまま不平をもらす。


「えぇ〜。もう切っちゃうのかよぉ〜」

「もぉ~っ‼ 何なんですかっ⁉」

「久し振りに雄太をからかいたくなった……だ・け」

「くぅ〜っ‼」


 周りの先輩達もゲラゲラ笑っている。


「とりあえず飯行くぅ〜? 酒? あ、まだ禁酒してるんだっけ?」

「してますよ。少しぐらいなら良いんだろうけど、春香は『出産して、断乳する頃までは呑まない』って言ってますから」

「愛しのハニーが呑まないから呑まないんだもんなぁ〜。お前、良い旦那してるよなぁ〜」


 次に電話を使う先輩騎手が近付いてきたので、雄太は自室に向かう。


「ハニーって……。春香は呑んでも良いって言ってくれてるんですけどね。仕事の付き合いもあるんだしって」

「春香さんって、本当に競馬と関係ない世界の人とは思えないよなぁ〜。初めての妊娠だってのに、雄太の長期滞在を気持ちよく送り出すんだからさぁ〜」


 梅野は、真面目な顔をして呟いた。雄太や純也にだけでなく、春香にも兄貴と言う気持ちを持ち続けているのは変わらないようだ。


「今回は、余程の事がない限り、二週間に一度は帰るつもりをしてます」

「そうなのかぁ〜? まぁ、その方が良いよなぁ〜。悪阻が落ち着いても何かと不安だろうしなぁ〜。防犯対策もロクにない一軒家に一人だしぃ〜」


 雄太も防犯対策は気になっていた。今の家は何の変哲もない一軒家である。週末を留守にしているのだけでも、泥棒や変質者が来るのではないかと雄太は気をもんでいたのだ。


 遠征は、騎乗依頼次第では二ヶ月も留守にする事となってしまう。


「新しい家は、これでもかっ‼ ってぐらいに防犯対策してますよ。安心して遠征が出来るように」

「春香さんだけじゃなく、子供もいる家になるからなぁ〜。それなら、鷹羽の両親と同居ってのもアリだったんじゃないのかぁ〜?」


 雄太は一人息子だから、将来的に親の面倒は見るつもりでいる。それもあり、新居を建設するにあたり同居を打診してみたのだ。


「同居なんぞ急がんで良い。ありがたい事に、春香さんはトレセンの近くに住みたいと言ってくれて、今も新居を近くに建設してるんだ。お互いに何かあったら助けに駆け付けられる距離なんだ。同居は儂らが、もっと歳を取ってから言ってくれ」

「そうよ。まだ同居なんてしなくて良いわ。今は、雄太と春香さんの家庭を大切にしなさい。将来、春香さんが雄太のG1を見に東京に行きたいとか言ったら、孫の面倒は見させてもらうわよ?」


 二人共、近くに住んでくれているのだから、同居は早いと言ってくれた。実際、慎一郎も理保もまだ年寄りと言う歳ではない。


 直樹と里美よりも年上ではあるが、元気そのものなのだ。


「父さん達が望むか、確実に同居した方が良いと思うまでなしって事になりました。春香は、淋しくなったら東雲の家に戻るって言ってましたし」

「直樹先生が帰してくれなかったりしてぇ〜」

「ははは……」


 実際、雄太と春香が帰ろうとすると、里美がたしなめるまで引き止めるような時があっただけに否定は出来ない。


 その時の直樹が、カームとダブってしまった事は内緒である。





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