表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
君と駆ける······  作者: 志賀 沙奈絵


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

360/737

356話


 祝勝会も無事に終了し、中京開催が終わり、雄太は小倉での騎乗依頼が来ていた。まだ安定期に入っていない春香を残し、小倉滞在をするかどうか悩んでいた。


(どうしよう……。また東雲に帰っててもらおうか……。子供が出来てなかったら、一緒に小倉に行くってのもありだけど……)


 スタンドでコーヒーでも飲むかと思っていると遠くから呼ぶ声がした。


「雄太ぁ〜」

「ん? あ、ソ……え? ええ〜っ⁉」


 遠くでも、はっきりと分かる。赤みの強い茶髪から、真っ赤な髪になっていたのだ。


 調教に出ている時はヘルメットで見えなかったから、雄太は固まった。


 純也は、猛ダッシュで走って来て、息も乱さずにニッと笑う。


「調教終わった? コーヒー飲もうぜ」

「あ……あのさ、その髪どうしたんだよ……? 昨日までと全く違うじゃないか……」

「ああ。昨日、調教が終わってから染めて来た」

調教師せんせいに怒られなかったか……?」


 並んで歩きながら雄太は訊ねた。梅野の金髪も、最初は所属厩舎の調教師に怒鳴られたと言っていた。


「ちゃんと調教師せんせいに言ってから染めたから大丈夫だぞ。今朝会った時、何も言われなかったしさ」

「それなら良いけど……」


 二人共、アイスコーヒーを手にして長椅子に座る。


 駄弁だべってる間にも調教師から声がかかり、騎乗依頼の予定が埋まっていく。


「すんません。俺、先に函館でもらってるんで。またお願いします」


 純也もG1に出場し好走した事で騎乗依頼がグンッと増えた。


(ソルは函館か……。春香が来てくれた時の事を思い出すな)


 春香に会いたくてたまらなくなっていた時に、同じく雄太に会いたくなった春香が函館まで内緒でレースを見に来た。


(あの頃は、一緒に旅行とか出来ないって思ってたから、数時間だけでも函館で一緒に居られただけで嬉しかったんだよな)

「そう言えば、アメリカの話はどうなった?」

「ああ。俺が乗る馬が放牧中なんだってさ。もうちょいしたら帰厩ききゅうするみたいで、乗れそうなレースが決まったら連絡来るんだ」


 本当なら春香と行くつもりだった海外騎乗だが、妊娠中だから春香は留守番だ。


「春さん、一緒に行きたかっただろうけど、今は子供第一だよな」

「ああ。けど、まだまだこれから海外の騎乗依頼もらえるように頑張るさ」

「雄太なら出来るって、俺も思ってるぜ」

「サンキュ」


 純也がグッと親指を立てる。


「でさ、アメリカ土産って何があるんだ?」

「へ? 土産? 何だろな?」

「温泉饅頭みたいなのあんのかな?」

「何で、アメリカで饅頭なんだよ」

「さすがにないか」


 二人でゲラゲラ笑っていると、春香のマッサージを受けていた人達から差し入れをされる。


「雄太ちゃん。これ、朝採って来たんだ」

「おぉ〜。大きな桃ですね。春香喜びますよ。大好物なんで」


 既に、ヘルメットの中にはトマトや胡瓜も入っている。


「そうだ。春さんが買った物を受け取らないって言った時さ、皆がG1騎手に野菜とか差し入れしても良いのか? って悩んでたの知ってるか?」

「知ってる。俺、直接訊かれたし。せっかく無料にしてるのに買った物もらうのって嫌だって春香が譲らなかったからな」


 純也は、ググッと伸びをする。

 

「あ〜あ、春さんみたいな女の子居ないかなぁ〜」

「あれ? 何か良い感じの子がどうとか言ってなかったか?」

「聞いてくれよぉ〜。最初はスゲェ良い子だって思ったんだ。でもさ、飯に行く場所がレベルアップしていくんだよ」


 雄太達もそうだったから、別におかしくは思わず、とりあえず頷いた。


「でな、二万とかのコース行きたいとか言うから連れてったら、礼も言わねぇで、次は三万のコース行きたいって言いやがんの」

「マジかよ? それって、ソルがどれだけ惚れてるか試してんだろ?」

「それも嫌だしさ、礼も言わねぇ非常識なのも嫌なんだよな。金目当てが透けて見えた気がして、もう連絡もしてねぇ」

「そっかぁ……」


 溜め息を吐いた純也の肩をポンポンと叩いて慰める雄太だった。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ