26話
「梅野さん。東雲に行く前に、買い物に連れて行ってもらっても良いですか?」
雄太がそう言うと、梅野はニッコリ笑って頷いた。
「良いぞぉ~。んじゃ、ちょい早いけど行くかぁ~」
(本当、見た目も内面もイケメンなんだよな……)
雄太は、梅野がモテるのも当たり前だとつくづく思った。
(女の人って、どんなのもらったら喜ぶんだろ……?)
年上の女性に贈り物などした事のない雄太は、草津に向かう道中ずっと考えていた。
そして、チラリと運転している梅野を見る。
(梅野さんが一緒で良かった。モテる梅野さんなら、良いアドバイスもらえそうだし)
顔も良い上、私服のセンスも良い。
その上、性格も優しく気遣いも出来るとなればモテない訳がない。
(梅野さんぐらい格好良かったらなぁ……。やめとこ……)
劣等感を刺激されるがやはり憧れてしまう。
(市村さんも梅野さんみたいなイケメンが良いのかな……?)
なぜだかふと思ってしまい、雄太は焦った。
(……って、今のは何だよ。バカか俺は。昨日から俺、変だ……)
心の中で頭を抱える雄太だった。
店内に入るだけで、女性客や女性店員の視線が梅野に集まる。
それを見て、雄太は小さく溜め息を吐く。
(いつもの事だ。気にしない気にしない。そんな事より市村さんが喜んでくれそうなの探そう)
雄太はそう思い、陳列してある膝掛けに視線を移す。
その真剣な顔を見て、梅野は車椅子のハンドルから手を離し雄太から少し離れた。
(ふ~ん。成る程成る程ぉ~。これは、ひょっとしてひょっとするのかなぁ〜?)
梅野はチラリと雄太を見てから、自分を見てキャーキャーしている女性客を引き連れ、他の客の邪魔にならない場所へ移動した。
(梅野さん? あ……。もしかして気を使わせたかな? けど、今は市村さんの膝掛けを選ばないと)
あれこれ手に取ってみるが、いまいちピンと来ない。
(ん~。他の店に行くか……? 時間は大丈夫かな?)
そう思ってふと顔を上げると、棚の上の箱に入れて並べてある膝掛けが目にとまった。
ふんわりとした柔らかそうな素材。綺麗で上品な淡いラベンダー色で、隅に桜の花の刺繍がしてある。
(あ、あれ良いかも)
「これか?」
女性客達と勤務中の女性店員達からの握手とサイン攻撃が一段落した梅野が、スッと棚から箱に入った膝掛けを取ってくれた。




