24話
(一番年上になったら『25日のクリスマスケーキ』って言われるんだろうな。ま、良いけど……)
そんな事を考えていると、他の従業員達の声が聞こえて来た。
(あ……。もう、そんな時間か)
春香がパソコンを起動させ、電話のアナウンスを営業中に切り替えた途端、着信音が鳴った。
「おはようございます。お電話ありがとうございます。東雲マッサージ店です」
春香が受話器を取り応対すると、一瞬の間があり
『……もしもし。あの鷹羽と言います。市村さんの予約をしたいのですが』
と雄太の緊張した声が聞こえた。
「あ、鷹羽さん。おはようございます。市村です」
『おはようございます。出てくれたのが市村さんで良かった。こう言う電話慣れてなくて』
春香が名乗ると、雄太の口調が変わった。
少し照れ臭そうに話す雄太に笑みが溢れる。
(十七歳じゃ、慣れてなくて当たり前だろうなぁ)
『今日の予約12時でお願いします』
「はい。12時ですね。お待ちしています。あ、今日は正面入口からお入りくださいね」
春香はそう言いながら、パソコンの自分の予約表欄の12時の所に『鷹羽様』と片手で打ち込む。
『はい。あの……それで……その……』
雄太が物凄く言い難そうにする。
「何かありました? もしかして、施術の効果がなかった……とかですか?」
春香は心底焦った。今朝感じたのは、施術がしっかりと出来てなかったからかとドキドキする。
『あ、違うんです。足の事じゃなくて……その……施術費……の事で……』
申し訳なさそうな、恥ずかしそうな声が耳に届く。
「もしかして、鈴掛さんから変な話を聞かされました? もう鈴掛さんたら。強引な方には高額請求したりする事もありますけど、鷹羽さんにはそんな事はしません。そうですね。昨日と今日の分で……… 二万円もあれば大丈夫です」
春香の答えに、雄太はホッと息を吐いた。そして 疑問がわいた。
(二万円……? 昨日と今日ので? 鈴掛さんん、昨日ファミレスで奢ってくれたけど、珍しくお金そんなに持ってなかったのかな? だったら悪かったかなぁ……)
だが、施術してくれた春香が言うのだから間違いはないだろうと雄太は思った。
金額を言う時の間は、少し気になったが。
『分かりました。じゃあ、12時に』
「はい。お待ちしています。気を付けてお越しください」
春香が言うと
『はい』
と雄太は答え、受話器を置いた。




