20話
「雄太。足はどうなんだ?」
鈴掛に訊かれて、雄太は顔を上げた。
「え……? あ……マシになってます。なぜ……ですかね?」
そう言うと、また視線を下げる。
「マッサージして貰ったからじゃねぇの?」
純也は、食べ終えたハンバーグの鉄板とライスの皿をテーブルの隅に追いやりながら言う。
「まだ、はっきり分かんねぇってトコか。痛み止めが効いてんのか、施術が効いたのかって」
鈴掛はそう言ってコーヒーのカップを持った。
「はい……。効いた気はするんですよ。足は軽くなったんで」
雄太は、それだけは確かだと言いきった。
鈴掛はコーヒーを一口飲む。
「まぁ、半信半疑なのは分かるぞ。普通『神子』とか『神の手』なんて言われても『はい。そうですか』って簡単には信じられんだろうからな。で、だ。お前、病院で貰って飲んだ痛み止めが、そんなに長く効くとか思ってんのか?」
雄太は鈴掛に言われて思い出す。
「あ……。病院の先生は『これだけ腫れてたら一~二時間もしたら痛くて痛み止めを飲みたくなるだろうけど我慢しろ』って……」
「じゃあ、やっぱあの巫女さん スゲェ人なんだ?」
純也は、いつの間にか追加注文したチョコパフェをモグモグと食べながら感心したように言う。
「純也……、お前、いつの間に……。てか、お前ら勘違いしてるからな?」
「「勘違い?」」
雄太と純也の声がハモる。
「そうだ」
鈴掛は、テーブルに置いてあるアンケート用紙とボールペンを手に取り、アンケート用紙を裏返して『神子』と書いた。
「春香ちゃんは『巫女』じゃなく『神子』だ。『東雲の神子』や『蒼炎の神子』って呼ばれてる」
鈴掛は『神子』と書いた前に『東雲の』と書き足し 下に『蒼炎の神子』と書いた。
「スゲェ〜二つ名っすね」
純也は、鈴掛が書いた春香の二つ名をマジマジと見ながら言った。
(『蒼炎』…… か……。うん。あの時の感じからしたら『蒼き炎』って言うの分かるよな。けど、俺は笑った時のほんわかした雰囲気の方が良いな……)
雄太は、プロの目をした時のキリッとした春香とニコニコ笑いながら話す春香を思い出す。




