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君と駆ける······  作者: 志賀 沙奈絵


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204話


 2月14日(日曜日)


 京都競馬場 11R 第28回きさらぎ賞 G3 15:40 芝2000m


(寒い……。雄太くん、体冷え切ってないかな? 家に居る時、風邪引かないようにしないと駄目よね。湿度計買って加湿器も買おう)


 春香は自宅に泊まりに来てくれるようになった雄太の為に色々と買い求めていた。



✤✤✤



 先日、雄太はリビングに入り驚き固まった。


「は……春香……。このデカいテレビ……どうしたの……?」


 リビングのレイアウトが変わっていて、ソファーの正面に大画面のテレビが設置してあった。


 テレビボードの下にはビデオデッキもあった。


「あ〜。日曜日、雄太くんが近場の競馬場だったら、仕事終わりにここに来た時、私が仕事中の時もあるでしょ? 暇潰しに良いかなぁ〜って思って買ったの」


 確かに京都や阪神だと春香の家に行く頃、春香がまだ仕事中の時もあった。それで、雄太はレースが終了し拘束解除になった時に春香の自宅に電話をして、春香が出なかったら少し時間を潰してから行くようにした。


(だからって……こんな立派なのを……。実家にあったのよりデカいんだけど……)

「私も料理番組とか録画しておきたいとかもあるし、ついでに買ったんだぁ〜」


 『自分の為でもある』と言われてしまっては、雄太は何も言えなくなってしまった。


 ふと、ビデオデッキの横にビデオテープが置いてあるのに気付いた。手に取って見ると競馬中継のラベルが貼ってあった。


「これ……俺の……」


 雄太がビデオテープを手にしているのに気付いた春香は

「えっとぉ……。雄太くんが次のレースの研究する為にならないかなぁ……なんて思っちゃって……ね」

と、はにかみながら言った。


(本当に……もう……。可愛すぎだろっ‼)


 同じレースに出た馬と再び同じレースに出る事もある。その時の対策をしたいから録画があるのはありがたかった。


「ありがとう」


 そう言って抱き締めてくれた雄太に春香はホッとしていた。



✤✤✤



(あの時、また叱られるかと思ったんだよねぇ〜。次に何か買う時は相談した方が良いのかな? でも、相談したら駄目って言われそうだし……)


 実家住まいをしていた時の雄太は、それなりに広い部屋を使っていた。だが、入寮してからは部屋が狭いと聞いていたのだ。


 春香は、自分の家に来た時はリラックスして欲しいとの思いで色々したくなっていたのだった。


(雄太くんに『何か欲しい物ある?』って訊いても教えてくれないしなぁ……。あ、レース始まっちゃう)


 目で雄太を追いながら、色々と考えている間に馬が次々とゲートに入っていた。


(頑張って応援しなきゃ)


 スタートは正面スタンド前。ゴール前をキープ出来なかった春香はゲートがある所の近くに居た。


 雄太は3番人気。出走頭数は少ないが、春香としてはやはり一着でゴール板を駆け抜けて欲しいと願っていた。


(頑張って……)


 ゲートが開くと雄太は先頭集団の中に居た。


 落ち着いた感じで前目につけている。ベテランの騎手の人達の中に居ても、気遅れする事もなく駆けている姿に惚れ惚れしていた。


(格好良い……)


 雄太が『堂々としたい』と言ってくれてから、一段と雄太が大人に思えていた。


 自分の保身に走っても良いものだが、春香を大切に思っていてくれるのを肌で感じていた。


 ドドドドドっ‼


 久し振りに現地で見る競馬は迫力満点で、蹄鉄が地面を蹴り上げる音にドキドキが止まらなくなる。


「もう少しっ‼ 頑張って〜っ‼」


 4コーナーを回って来た雄太を見て、思わず声が出た。大勢の観客が居るから声を出しても届かないと分かっていた。それでも、声を出さずにいられなかった。


 ゴール前、雄太の乗った馬はグンっと前に出て接戦を制し一着でゴール板を駆け抜けた。


「やったぁ〜っ‼」


 雄太の単勝馬券を手にピョンピョンとジャンプして喜ぶ春香と、馬券が的中した周囲の人達の歓声が京都競馬場を包んでいた。


(おめでとう、雄太くん)


 雄太の夢は、また一歩前進した。




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― 新着の感想 ―
雄太君のために色々考えそして頑張る春香ちゃん。 そして雄太君もまた春香ちゃんと堂々とを頭に行動し頑張る。 そんな二人の思いと願いが雄太君の力を増幅させ、そして。 見事一着!!! すげえかっこいいですね…
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