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君と駆ける······  作者: 志賀 沙奈絵


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196話


「皆の今年の目標も聞けたし、そろそろ初詣に行って来るかな。鷹羽くんは地元の神社に行くのかい?」


 直樹は立ち上がると、そう訊ねた。


「はい。夕方、春香と一緒に行こうかと思ってます」

「そうか。また、一緒に食事をしよう」

「え?」


 雄太の休みは月曜日だと直樹は知っているはず。


 一緒に食事は無理だと分かっているはず。


「日曜日、近場のレースだった時、春が早上がり出来たら一緒に食事が出来る時もあるだろう」

「良いんですか?」

「ああ。鷹羽くんは、もう家族みたいなものなんだから」


 最愛の娘の彼氏を家族だと思っていてくれるのが嬉しかった。


「あ……ありがとうございます。嬉しいです」


 雄太は深々と頭を下げた。




 直樹と里美は初詣に出掛け、春香は片付けを始めた。


 その姿を見ながら雄太はのんびりとコーヒーを飲んでいた。


(家族……かぁ……。直樹先生に認めてもらえたのはスゲェー嬉しいな。ん? あ……)


 ふと気が付き立ち上がり、キッチンへと向かった。


「なぁ、春香」

「ん? コーヒーのお代わり?」

「違うんだ。俺に出来る事はないか?」


 春香は洗い物をしていた手を止めて雄太を見上げた。


「え? どう言う事?」

「俺、ここに来てからずっと春香に世話してもらってるだけだよな? それじゃ駄目だと思うんだ。何か俺に出来る事ないか?」


 春香はジッと雄太を見詰めた。


「えっと……家事を手伝ってくれるって事?」

「そう。俺に出来る事ない?」

「そっか。私、雄太くんをお客様って思っちゃってた。雄太くんはお客様じゃなくて彼氏なんだよね。何かをお願いしても良かったんだ」


 春香は初めて気付いた。彼氏が泊まりに来たなら何かお願いしても良いのだと。


 雄太は何かしらお願いして、断わるような人ではないのだと。


「ありがとう。今は、もうないかな。次は何かしてもらうね。野菜の皮剥きとか出来る?」

「包丁は……無理かも」

「うん。じゃあ、ピーラー買っておくね。あ、手を怪我したら困るよね? 玉ねぎとか手で出来る皮剥きとかしてもらおうかな」


 一生懸命考える春香だが、雄太の何か手伝いたい気持ちは変わらなかったようだ。


「何でも良いよ。春香と一緒に何かするってのが良いんだよ」

「うん。じゃあ一緒に何かしようね」

「ああ」


 春香は洗い終わった物を乾燥機に入れてスイッチを押した。


 その後、春香と並んでソファーで色んな話をしていた。


「あ、春香」

「なぁに?」

「膝枕してくれる?」

「うん」


 雄太は春香の太ももに頭を乗せた。


(あ〜。良いな、こう言うの)


 春香はそっと雄太の髪を撫でる。


「初めて会った時は坊主頭だったよね」

「あぁ。中学から坊主頭だったからなぁ〜。久し振りに伸ばすって感じだな」


 雄太は春香の髪に手を伸ばした。


「やっぱり春香の髪の方がサラサラしてるな」

「私の髪は細いって美容師さんに言われたんだよね。セットしてもボリュームはないし、直ぐペタンコになるの」

「ん〜。俺、春香の髪好きだぞ。ポニーテールにしてるのも、風呂上がりの三つ編みも」


 何気ない会話が楽しい。さり気なく触れ合えるのが嬉しい。


「雄太くんに、そう言ってもらえるの嬉しいな」

「お正月は着物を着るって言ってたろ? 夏に浴衣着たりする?」

「うん」

「この辺のお祭りって日曜日?」


 雄太は浴衣姿の春香を見たくて訊ねた。


「日曜日のもあるよ?」

(よっしゃ)


 心の中でガッツポーズをする。


「もしかして浴衣着てるの見たい……とか?」

「あ、バレた?」

「凄く嬉しそうなんだもん」


 春香がおかしそうに笑う。


「お祭りに行けなくても、雄太くんが浴衣を着て欲しいって思ったなら着るよ?」

「マジで? 春香の浴衣姿見たいな」

「うん。じゃあ、夏になったらね」


 お祭りじゃなくても春香の浴衣姿が見られるなら良いと思った雄太だった。





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― 新着の感想 ―
雄太君はどうやらちゃんと直樹さんにも家族のように認められたようですね!! これは本当に嬉しいですよね! そんな二人は同じ時間を凄す。 幸せですね(*^^*) 着物姿もきっと見られるでしょうし幸せですね…
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