192話
春香の中にあるのは、体のほんの一部だと言うのに全身を包み込まれているような錯覚をしてしまいそうになる。
(スゲェー気持ち良い……。ずっとこの中にいたくなるくらい……気持ち良い……)
春香の震える指が雄太の頬に触れた。
「好き……。雄太くんが……大好き……」
初めての痛みを堪えながら呟く春香への愛おしさに泣きたくなるぐらいに胸が熱くなった。
「俺もだ……。大好きだ……。春香が大好きだ……」
そう言った雄太は押し寄せる快感に勝てそうになかった。
「ごめん……。俺、もう限界……。優しく出来ないかも……」
「うん……」
春香が頷くと雄太は何度か激しく腰を打ち付けた。
全身をゾクゾクとした快感が襲い、小さく息を詰めた雄太は息を乱しながら春香に覆い被さった。
(ヤバい……ぐらいに……出てる……)
全身がとろける様な快感に溺れそうな気がした。
(あ……でも……早く抜かないと……駄目なんだよな……?)
全て出し切った感じがした後、ゆっくりと春香の中から引き抜きティッシュで処理をする。
付着した鮮血を見ると、また罪悪感がわいた。
(涙が出るぐらいの痛みがあって……出血するんだもんな……。春香、大丈夫なのかな……?)
春香を見るとハァハァと息を乱していた。
(そっと拭けば大丈夫かな……)
新しいティッシュを手にしてグッタリとしている春香に声をかけた。
「痛いかも知れないけど、ちょっと我慢して」
膝を立てさせてそっと痛みを与えないように拭き取り、動けなくなっている体に毛布をかけた。
「手洗って来るから」
「うん……」
雄太は洗面所へと向かった。
手を洗って鏡を見る。まだ紅潮している顔をジッと見た。
(春香と……春香とシたんだ……。俺……春香と……)
本当に今で良かったのかと言う思いが、また湧き上がる。
まだ早かったのではないかと思ってしまう。
(春香が良いって思ってくれたんだから良かったんだよな……?)
答えの出ない難問だと思った。けれど、二人で決めたのだから良いのだと思い寝室へ戻った。
寝室に戻った雄太の姿を見て、春香は少し体をずらした。
そこに体を横たえ一緒に毛布にくるまっているとジワジワと幸せな気持ちが溢れて来た。
(俺……幸せだ……)
まだダルさがあるだろう春香をそっと抱き締めた。
「あのね……」
雄太の胸に顔を寄せながら春香が小さな声で言う。
「ん? 何? 体つらい?」
「うん、少しだけ。えっとね……ありがとう……」
雄太は驚いて春香の顔を見た。
「え? え? そ……それ、俺のセリフだから。何で春香がありがとうなの?」
「私の初めての人になってくれたから……」
恥ずかしそうに、でもはっきりと言った春香を見詰めた。
「初めてのって……。それはそうだけど……痛かっただろ……?」
「うん……。体が裂けちゃうかと思った……。でも……雄太くんだから……良いって思って……」
体が裂けるかと思うくらいの痛みを与えたのに、自分で良かったと言われて嬉しくない訳がない。
「俺の方こそ、ありがとう……。今まで以上に大切にするから。ありがとう」
「うん。私も大切にするね」
見詰め合ってキスをする。
今まで見て来た春香と同じようで違って見えた。
(俺の……俺だけの春香……。小さくて可愛いだけじゃない……。色っぽい顔も大好きだ……。絶対、誰にも渡さない……。誰よりも幸せにするんだ……。一緒に幸せになるんだ……)
出会って、いつの間にか好きになって、何度もフラれて、それでも諦められずに想い続けた女性が腕の中で笑っている。
自分を初恋だと言ってくれた。
初めての恋人になり、ファーストキスも、処女も全て捧げてくれた。
(これで大事にしないとかないよな)
雄太と春香は、もう一度キスをして抱き合って眠りについた。




