191話
春香の寝室は、レースのカーテンだけのままだったので外灯の光が入り薄っすらと明るかった。
春香が後ろ手で寝室のドアを閉める。
パタン
その音がやけに大きく聞こえた。
「春香……」
ゆっくりと抱き締めてキスをする。春香も雄太の背に腕を回して深くなるキスを受け止める。
唇を離して耳元に口を寄せる。
「好きだ……。大好きだ……」
そう言って春香の首筋にキスをする。そして、パジャマのボタンを一つずつ外して行く。
春香は雄太のスエットの袖を握って俯いていた。
(ヤバ……。心臓の音、聞こえるんじゃないか……?)
自分の心臓の音が聞こえる気がした。
それでも、ボタンを外す手は止められない。一つ一つ外して行くと柔らかな膨らみが目に入った。
(春香の……)
ストンとパジャマの上を肩から滑り落とすとズボンに手をかけて行く。膝辺りまで下ろすと小さな白い下着が目に入った。
乱暴に触れたら壊れそうな下着にそっと手をかける。ゆっくりと引き下ろして、小さく息を吐きながら立ち上がった。
「春香……綺麗だ……」
直ぐにでも押し倒したくなる気持ちを抑えながら生まれたままの春香を抱き締めた。
「ありがと……。恥ずかしいけど……嬉しい……」
春香は小さな声で言うと雄太を見上げた。
雄太は軽くキスをして、春香をベッドに横たえた。そして、自分も全裸になるとしっかりと抱き締めた。
(人の肌って……こんなに気持ちが良いんだ……)
お互いの心臓の鼓動が感じられる。
(春香……。俺だけの春香……)
そっとキスをしながら春香の手に触れると少し震えているのに気付いた。
「怖い……?」
「少しだけ……。でも、雄太くんだから良いの……」
「うん」
ゆっくりと全身にキスをして行く。
(入れて出すだけなんてしない……。春香は性欲の処理するだけの相手じゃないんだから……)
「ん……」
時折漏れ聞こえる声に、触れた肌の滑らかさにゾクゾクする。
その声をもっと聞きたくて、体を上方に戻して柔らかな胸に手を伸ばす。手に余るくらいに大きくて柔らかな感触。手の平の真ん中に感じるツンとした突起の感触。
「あ……はぁ……」
顔を覗き込むと今まで見た事がない色っぽい表情の春香が居た。
(こんな顔するんだ……。スゲェ色っぽい……。この顔は俺だけのものだ……)
「春香……良い……?」
雄太は耳元で訊いた。春香は小さく頷いた。
雄太はヘッドボードに置いていたゴムを手に取るとゆっくりと装着した。
そして、春香の足をゆっくりと広げて体を入れた。
(ゆっくり……ゆっくり……。なるべく痛くないようにしなきゃな……)
そっとあてがいゆっくりと腰を進める。つっかえる感覚があった瞬間、春香の小さな声が漏れた。
「い……た……」
春香の目から涙が溢れていた。その姿に動きをとめた。
「やめる……?」
雄太が訊くと春香は首を横に振った。
「やめ……ない……で……」
息を乱しながら、痛みを堪えながらそう言った姿に愛おしさが込み上げる。
「……うん。分かった……。ゆっくり大きく呼吸して」
逃れられない痛みを少しでも和らげたいが、男の雄太にはどうする事も出来ず言った。
春香が頷くのを見届けてから、またゆっくりと中へ入って行く。
「ん……く……」
春香の小さな声を聞きながら、雄太は春香の熱を感じていた。
熱く締め付ける中の快感。
全身を駆け抜ける快感。
(女の子の初めてって……何で痛いんだろう……。男の俺は……こんなに気持ちが良いのに……)
少しわいた罪悪感に気が紛れた。でなければ、果ててしまいそうなぐらいだった。
全てを春香の中に収めるとそっと抱き締めた。
「春香……大丈夫……?」
それ以外の言葉が思い付かなかった。
「うん……」
本当に小さな声で春香は答えた。
大丈夫な訳はないとは思いながら、流れた涙を指で拭った。




