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君と駆ける······  作者: 志賀 沙奈絵


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180話


(どうしよう……。母さんの体調が悪くなって……とか言おうか……? けど……)


 春香に嘘を吐く事を躊躇ちゅうちょした。しかし、本当の事を言えば春香は『自分の所為』と、また思ってしまうのではないかと思った。


 ただの親子喧嘩ならまだ良い。慎一郎は調教師なのだ。父親以上に揉めたりしてはいけないのだから。


(……春香に、嘘は吐きたくない……。バレるとは思わないけど……。俺が、嘘を吐きたくない……)


 雄太は素直にあった事を話す決心をして電話をかけた。事情と状況を話すと春香は一瞬黙ってしまった。


『……お母さん大丈夫? もし首とかに痛みが出たら連絡してね? 私、行くから。夜中でも行くから、ね?』

「うん。ありがとう。俺を庇いながらも上手く避けたって言ってはいるけど、何かあったら頼むよ」

『うん……』


 理保の事を気遣っていた春香が小さく息を吐くと黙ってしまった。


「春香の所為じゃない」

『え……?』

「今、自分の所為でって思ってるだろ? 駄目だぞ? 春香だけの所為じゃないんだ。二人で立ち向かわなきゃなんない問題を一人で背負おうとしないでくれ。俺が頼りないとか思ってないんだろ?」


 雄太の力強い言葉に春香は嬉しくなった。つい自分が悪いのだと思ってしまう癖は中々直らない。


『うん。ごめんね』

「明日なんだけど……」

『明日は、お母さんについていてあげて? もしかしたら明日になってから痛みが出るかも知れないし』


 雄太としては春香に会いたい。だが、自分を庇って怪我をした母を置いて出かけるのは間違っている気がした。


 慎一郎が帰って来ても気不味くて顔を合わせないかも知れないし、管理馬に何かあれば出かけてしまうのだ。


「そうするよ。また電話するから。おやすみ」

『うん。待ってるね。おやすみなさい』


 名残り惜しい気持ちを抑えながら雄太は受話器を置いた。





 翌朝、理保は頬の腫れや赤みも引いたし痛みもないと言う事で雄太はホッとしていた。念の為、夕方まで様子をみていたが大丈夫だと思ったので、報告と少しだけでも顔を見たいと春香の自宅に電話をした。


(あれ? 春香出ないな……。買い物かな?)


 母の無事を言伝ことづてしてもらおうと店の方に電話をすると里美が出た。


 雄太が理保の状況を伝えると里美はホッと息を吐いた。


『春香から聞いてたのよ。大事だいじがなくて良かったわ』

「ありがとうございます。その……春香は?」

『春香を可愛がってくれてる居酒屋の店主さんが腰を痛めたって電話が来て、ついさっき出かけたのよ』


 春香が近所の人達の為に走り回っているのは知っている。そして、近所の人達が春香を大切にしているのも聞いている。


『多分、一時間くらいで戻ると思うんだけど』

「あ……。良いんです。母の心配してくれていたので、無事だと伝えておいてください」

『分かったわ。鷹羽くんが春香の事大切にしてくれているのは分かるけど、ストレス溜めちゃ駄目よ? どこまで力になれるか分からないけど相談してくれると嬉しいわ』


 直樹と同じように里美も心配していてくれてるのが嬉しかった。


「ありがとうございます」


(いつか……春香と結婚出来たらお義父さんお義母さんって呼ぶんだよな……。こんな優しくて頼りになる義両親なんて、俺恵まれてるよな)

『じゃあ、春香が帰って来たら伝えておくわね』

「はい。お願いします」


 雄太は丁寧にお願いして電話を切った。


(何か……。ホッとしたような……残念なような……)


 今、会えば抱きたくなるかも知れない。春香は決心を固めたようだったが、いざとなると揺らぐかも知れないと思うと、もう少し時間をかけた方が良いのか迷った。


(来週までオアズケ……かぁ……。って、俺もうちょい落ち着けって。いくら若いからってガッつくなよぉ……)


 そうは思ったものの十八歳の男としては当たり前と言えばそうなのかも知れない。


 恐らく残念な気持ちの方が大きいかなと思いながら、翌日の仕事に備えて早目に休む事にした。





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― 新着の感想 ―
雄太君は改めて春香ちゃんに母親の無事をつげる。 そしてでたのは里美さん。 直樹さんといい里美さんといい本当に素晴らしい両親ですよね(*´ω`*) 春香ちゃんとは話せなかったけど、それでも素晴らしい両親…
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