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君と駆ける······  作者: 志賀 沙奈絵


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109話


 週明け月曜日

 

 週末のレースで雄太は一つ勝鞍を上げていた。無事を祈っていた春香は、雄太が怪我なくレースを終えた事がなにより嬉しかった。


 店のポストに入っていた手紙を抱き締めて

(おめでとう、雄太くん……)

と心の中で呟いた。


 手紙には、週末に重賞G3の騎乗依頼が来ており、何の問題もなければ走る事になりそうだと書いてあった。


(いつか、雄太くんが重賞で一着になったら、何かプレゼント出来たら良いな……。直接渡せなくったって、住所は知ってるんだし、名前を書かずに送れば良いよね。男の人って何をもらったら嬉しいんだろう……?)


 直樹には相談出来ない。誰に贈るのかと訊かれたら困る。そもそも、直樹と雄太では歳が違い過ぎる。里美に相談したら、相手を教えずに済むとは思えなかった。話術で里美には敵わないと思っている。


(やっぱり梅野さんかなぁ……。歳も近いし。ん〜。でも、わざわざ呼び出したりしたら迷惑かも知れない……。あ、明日の一般の所に梅野さんの予約あったような気がする。よし)



✤✤✤



 翌火曜日


「里美先生。今日の梅野さんの予約、施術者の指名なかったですよね。私に回してもらえますか? 差額は、私の給料引きで」


 朝食を早目に済ませた春香は、開店準備をした後、パソコンの予約者リストを確認してから、直樹達の自宅に行ってお願いをした。


「梅野さん? 何かあるの?」

「はい。ちょっと相談したい事があって」

(相談……? 何かしら? 鷹羽くん絡み……とか?)


 里美は、少し考えて春香を見た。雄太絡みだと、やはり切ない表情をするのだが、今日はにこやかで思い詰めた感じはしなかった。


「分かったわ。梅野さんがいらしたら、VIPルームに行ってもらうわね」

「ありがとうございます」


 春香は、頭を下げると店へと戻って行った。




「何だろうな、相談って」


 直樹と里美は、制服に着替えながら、さっきの春香の言う相談と言うのは何かと話していた。


「春香が梅野さんにって事は鷹羽くん絡みじゃないかしら……。でも、相談の内容が分からないのよ。鷹羽くんの誕生日は3月で、もう過ぎてるから誕生日プレゼント……って事でもないだろうし……」

「そうだな。大きなレースを勝った訳でもないしな」


 直樹も雄太のレースをチェックしていた。だから、雄太が勝ったレースは把握していた。


「梅野さんは、鷹羽くんの先輩でしょ? しかも仲が良いって感じだわ。春香は、好意を持ってる鷹羽くんに、過去の事や親の事を知られるのは嫌だと思うのよ。だから、お付き合いしたいとか、そう言う相談ではないと思うのよね……」


 そう言った里美の眉間の皺が深くなる。その様子を見た直樹は、ふと思い出した。


「あ、ゴメン。俺、里美に話してなかったな」


 春香の事で話さなかった事がなかった直樹の言葉に里美は驚き、ジッと直樹の顔を見た。


「俺さ、鷹羽くんに春の過去や親の事を話したんだよな」

「ええっ⁉ なぜ話したのっ⁉ あの子が絶対に嫌がる事よっ⁉ あんな話を好きな人に知られたと知ったら……あの子は……」


 里美の目が潤む。もし、自分が春香と同じ境遇だったら、絶対に何があっても好きな人には知られたくないと思うし、知られたら会えなくなると思った。


 直樹は、そっと里美の肩に手を置いた。


「里美は、春と鷹羽くんを付き合わせたいの? それとも、春を生涯独身でいさせたいの? どっち?」

「それは……。女の幸せが結婚する事だとは思ってないわ。けど、好きな人が居る幸せは感じて欲しいのよ……。でも、春香に……届かない想いを抱えて生きて行けとは言えないわ……。それは辛い事だもの……」


 里美は同じ女性として、養母ははおやとして溢れる涙を止める事が出来なかった。





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― 新着の感想 ―
春香ちゃんは雄太の手紙にいつかプレゼントしたいと考えどういうものがいいのかを梅野君に相談しようとする。 そしてそれに当然のように里美さんに気づかれる春香ちゃん。 彼女の話をしたよいう直樹さんに驚く里美…
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