10話
白を基調とした窓のない室内に入ると、細長いベッドと大きな背もたれのある椅子があった。そしてパソコンが置いてあるデスクがある。
雄太は、純也が押してくれている車椅子に座ったまま室内を観察し、ふと春香を見上げると、春香が雄太のほうを向き目が合った。
「どうかしました?」
少し首をかしげながら訊かれて、雄太は頭を下げた。
「すみません。ジロジロと見て……。その……その格好は、どう見ても巫女さんには見えないなと思って……」
「ミコ……サン?」
春香が不思議そうに訊くと、鈴掛が苦笑いを浮べた。
「こいつ勘違いしてるみたいだな。説明は後でしておくから、とりあえず足をみてやって」
「はい」
春香は頷くと、背もたれのある大きな椅子を手で示して
「こちらに移動出来ます?」
と訊いた。
雄太が片足で立ち上がろうとすると、鈴掛が雄太の脇と膝裏に手を入れて、ヒョイと抱き上げた。
「「え……」」
雄太と純也の声がハモる。
「何だよ?」
鈴掛は雄太を椅子に座らせると、不服そうな声を上げた。
「野郎が野郎を姫抱っこって」
純也が必死に笑いを堪えながら言うと、鈴掛は純也の頭にゲンコツを落とし、雄太は
「うっさい」
と呟いた。
(何なの……? この面白い人達は……)
吹き出しそうになるのを堪えながら、春香は 雄太の方を向いた。
「私、施術させていただきます市村春香と申します」
春香が頭を下げると、雄太は
「あ……はい。よろしくお願いします」
と頭を下げた。
春香は、スッと雄太の足元に膝を着いた。
「包帯取りますね」
「はい」
雄太が答えると、春香は治療の為に膝下までスッパリと切られているジーンズを雄太の足の後ろ側に回して、スルスルと包帯をほどき湿布を剥がす。
(かなり腫れてる……。全治一ヶ月…… って処かな……)
「骨に異常はなかったんですよね?」
そう訊きながら春香が顔を上げると、雄太は頷きながら答える。
「はい……。全治一ヶ月の捻挫だと言われました……」
落ち込んだ様子で答えた雄太を見上げながら、春香は少し微笑んだ。
(え……? 笑った……? 何で……?)




