9話
鈴掛は車から降りると、トランクから病院で借りて来た車椅子を出し素早く広げた。
純也も車から降り、雄太の座っている側に回りドアを開けて車椅子を近付けた。
純也は肩を出し
「掴まれ」
と短く言い、雄太は純也の肩に掴まり車椅子に座った。
鈴掛が通用口らしき金属製のドアの所に向かいインターホンを押す。
「鈴掛です」
鈴掛がそう言うと上部のライトが点き
『どうぞ』
と女性の声が聞こえ、ガチャリと音がした。
「行くぞ」
鈴掛がドアを大きく開け、純也が車椅子を押して中に入った。
(ここで俺の足が治るなら……)
雄太はグッと両手を握り締めた。
春香は、施術台や道具類の準備を終えると髪をキッチリと結び直す。
そして、もう一度 室内を見渡し準備の確認をしていると、通用口のインターホンが鳴るのが聞こえた。
春香は、開け放ってあるVIPルームのドアの外に立ち施術対象者を待った。
最初に顔を見せたのは数日前に一般として来店していた鈴掛。
春香が軽く頭を下げると、鈴掛は右手を挙げた。その後に続いて来たのは、車椅子に乗った若い男の子と同じ年齢ぐらいの男の子。
(あの車椅子の男の子が施術対象者ね……。左足首か……。二人とも見かけた事はないけど、嫌な感じはしないな……)
春香は、注意深く状況を確認する。
「ごめんね。残業させて」
鈴掛は慣れた様子で春香に声をかける。
「大丈夫ですよ。まだ帰宅してなかったですし」
親しげに話す二人を見て、純也が 雄太の耳元で話す。
「あの女の人……女の子かな? あの人が巫女さんみたいだな」
「あぁ……。うん」
雄太は鈴掛と話す春香を見詰める。
(女の……子……かな? 鈴掛さんより15㎝位……もう少し低い感じだから 身長が150㎝ないくらいだってのは分かるけど、歳は分からないな……。この人が…… 巫女さん……?)




