八章
長男と次男に報告をすると、頭を抱えてしまった。
まさか、本当に恋に発展するとは思ってなかったようで事態は深刻、それくらい愛のことが心配であると
いつものように望に送迎をしてもらい出勤する愛
今日は、朝の始業式があるもよう
「今日から新しく派遣さんに入ってもらうことになった三崎さん」
「よろしくお願いします」
どうやら最近仕上げ場の仕事が追いつかなくなってきたようで、新入社員を入れるというより派遣を入れることになった。普通に雇うより安いのだ。
仕事が始まり、各自持ち場に戻る。
愛は明と煇の面倒を見ながら仕事をする。
「煇くんは感じがいいね!手付きが早くて。明くんもいいよ。あとは素早く動こうね」
「愛さんに褒めてもらえるの嬉しいです」
「そんなに早く動かないとダメなの?」
「もうちょっと早く動けるかな。この仕事、ゆっくりだけど正確に見てもらわなきゃダメなんだよね」
「わかった」
話してわかると、頷いてくれた。
とてもいい子なんだと愛は思った。
仕事が早い燁と素直な明。
対極的だがいいコンビになるのではないかと、これからの仕事ぶりに期待してしまうのであった。
昼になり、昼食の時間だ。
あの後、ルーティンで回しながら仕事をしていた。時節、喋りながら。怒られない程度。
初日に話して以来だったが、話しやすい距離感というものがある。それがよくわかった。
2人を連れて、食堂へ来ると凜人と蒼が向き合っていた。
どうやら話していたようである。
蒼から「一緒にご飯食べませんか?」と声をかけられたので、そのまま同席して食べることになった。
「愛さんの今日はお弁当どうしたんですか?結構乱雑ですね。」
「今日、寝坊しちゃってね。今日は手軽に昨日作り置きしておいたのを詰めてきたんだ」
そういう愛のお弁当を覗くと、おにぎりとスープジャーに入っている煮物、ゆで卵とブロッコリーだった。
「愛さんにしては、珍しいですね。寝坊した理由聞いても?」
「昨日、家族会議だったんだ。その後にお菓子作り始めたら、寝る時間押しちゃって」
「そうでしたか。で、お菓子は何を作ったのですか?」
「今回は手軽にフィナンシェを作りました!」
「フィナンシェってそんな簡単に作れるんですか?」
凛人と話していると、煇が突っ込んできた。
「主な材料がバター、卵白、砂糖、アーモンドパウダー、小麦粉だから作れるよ。中級者向けではあるかな。基本8個だけど、今回は配るように作ってきたから結構な量です。それに千斗くんから情報貰っていたからね。後で、事務所行くことになってる」
千斗は社長の長男坊である。下に兄弟が2人ほどいる。
愛と千斗は外でも会うことがあるが、よく社長宅に呼ばれるので外で会うことがなくなりつつある。
「本当千斗さんと仲良いですよね」
「共通の話題が読書だからね。それなりに仲良くしてもらってます」
食べ終わったら、蒼、凛人、明、煇、そしてパートのおばさんたちに配り事務所へ向かった。
事務所に来ると、同期である寿崎光成が出迎えてくれた。
「いらっしゃい、笹田くん。で、今日は何を持ってきたんだ?」
「フィナンシェですよ。美味しくできました。持ち運ぶの手間だったので、缶入りです。ラッピングして入ってますから、事務所全員で食べてください」
「ありがとうな、いつも」
「いいんですよ。好きで作っているので」
「そうか。ならいいんだ」
そろそろ事務所から出ようかなと時計に目をやると、30分になっていたので、事務所を出る。
「僕、いくね」
「うん、午後も仕事頑張ってな」
事務所を出て、食堂へ戻るとみんなどうやらフィナンシェを食べて談笑をしていた。
どうやら今回作ったフィナンシェ絶賛だったらしく、美味しいと口々に言っている。
口にあってよかったと、愛は喜んだ。