七章
その後、愛と翔は駅で解散した。
そのまま出かけることも出来たのだが、愛が本屋まで付き合わせるのを断ったのだ。
自分の買い物がとてつもなく長くなるだろうと踏んで
好きなものに時間をかけて過ごしたいのもあったからで、翔が本が好きとは限らないだろうと思ってのこと
翔もそれを理解したことで、解散することを了承した。
愛が帰宅した後に歩と望が帰ってきた。
「愛、今日楽しかった?」
「うん、楽しかったよ。翔くん、すごくいい人だったよ」
「それは良かった。本は何買ったの?」
「大きなところだったから、たくさん買えてね。今回はサブカルチャー多めだよ。歩兄さんの本も見かけたよ」
小説家ということもあり、どんな本が売られているのかも気になるのだろう。
歩は色々愛に聞いていく。
どんな本があった、こんな本があったと話が盛り上がる一方、望はそんな2人の姿を見つめている。
愛の趣味が読書になったのは、長男の恩恵もある。
家にはいろんな蔵書があるから、退屈することがない。
歩の献本はあるのだが、仕事で資料としてもらっているものもある。大きくなってからは愛は自分で本を買うようになった。それを家族で回し読みしている。小説からライトノベルまで幅広く集めている。
気になった本を片っ端から買っているので、そろそろ部屋に置くスペースがなくなりつつある。
最近だとリビングスペースにも侵食しつつあるのだ。
「歩兄さんと愛、本当に本好きだな。漫画は買わないの?」
「それは僕も思ったな。兄さんの資料って小説もあるけど、専門資料が多いよね。見ていて楽しいから、疑問に思わなかったよ。僕は歩兄さんの本が好きだな」
長年ずっと本を見ていて、望は疑問に思っていたようだ。
しかし、漫画を読む習慣がなかったからあまり考えていなかったもよう
「確かに私の蔵書には、専門書が多いかな。漫画読みたかったら、買っていいからね」
「やっぱり。まあ、俺の部屋にくれば、愛来ていいからな。漫画あるからよ」
「うん、今度行くよ」
そうして話が終わった。
翔とは連絡を取りつつ、仕事を頑張る日が続いている。
ただ前みたいにお菓子を頻繁に作るようなことがなくなりつつあったそんな日が続いている。
何かイベントがあったり、出来事があったら作ったりしていたのだが、それが一ヶ月も続いていた。
歩と望は少し話し合ってみることに決めた。
「最近、お菓子作ってないがどうしたんだ?」
「悩み事があるのか?」
「そういうのじゃないんだけど、翔くんと連絡しているんだけど、お出掛けした日からちょっと気持ちが変わってきたんだ。翔くん、めちゃくちゃ優しくて」
そうそれは恋が芽生え始めているということであった。
それを知った望と歩は頭を抱えてしまった。