六章
毎週土曜日になると、開店時間に予約をするようになり、茶香には愛と望と一緒に行くようになった笹田家兄弟であった。
メニューが少ないがそこから研究しようとする愛がいるので、そこからレシピを捻り出すようにしている。
最初のうちは結構な頻度で行っていたが、今では行く頻度がなくなりつつある。
唯一愛の笑顔を見ることとがなくなるのではないかと不安を覚えた翔は、今日こそは連絡先を交換しようと想いを抱くのであった。
そして、やってきた土曜日の開店時間ーー、笹田兄弟が来店した。
「予約していた笹田です」
「いつもご来店ありがとうございます。こちらの席になります」
そして、通されるテーブル席へ
歩と望が隣り合って座り、テーブルを挟んで愛が座る。
家でも大抵この構図で座っているのだが、外へ行ってもいつもこうなる。
もうこれは習慣していることだ。
「注文していたメニューです」
期間限定メニューもある茶香だが、愛は定番メニューに着目している。その名も月ーつきー。
独自の数種類のブレンドチーズ、黒胡椒、蜂蜜が入っていて、甘じょっぱさが人気。
他にも色々あるのだが、一番最初に食べたパンケーキということもあってか、お気に入りだ。
茶香で提供される食事系パンケーキだから気に入ったのだ。
茶香のパンケーキは、メレンゲを使って作っているのでふわふわしている。
真似をしようとすれば、家でも簡単に作れるようになった。
ここに来る理由もそろそろ終わりかなと思う、愛であった。
パンケーキも食べ終わり、会計に翔が担当をするようになっている。
最初から最後まで望が会計をしていたが、それももう終わりかなと思いを馳せる。
そんな時、翔から声をかけられた。
「愛さん。これ僕の連絡先です。もしよかったら、今度遊びに行きませんか」
翔は勇気を出した。
「いいですよ。実は僕も仲良くなれたらと思っていたので」
微笑みながらいうので、翔はノックアウトされた。
この笑顔が見るたびに好きという気持ちで溢れてくる。
気持ちがどんどん膨れていく。
告白するにはやる気持を押さえつけている。
しかし、愛は知ることもない気持ちであった。
それから連絡を交換してから、2人の仲が良くなっていった。
歩と望は、それを知った時はどうしようかと思ったが、変なことにならなければ問題ないと判断した。
そして、ついにやってきた愛と翔のお出かけの日
行く場所を事前に決めていた。待ち合わせ場所で待つこと数分、翔がやってきた。
「ごめんね、少し遅れちゃった」
「ううん、大丈夫。いつも早めの行動しちゃっているから、癖になってるだけだから」
「そうなんだ。じゃあ、行こうか」
「うん」
今日のために翔はデートプランを練っていた。
映画を見て、カフェでお茶をする。
愛と翔は共通点があったから、好きな映画のジャンルが同じということもあって、話が進んだ。
今日見る映画はファンタジー。
前作からファンということもあってか新作が出るというのを聞いて、家族で行くか迷っていたところを翔に誘われたということだった。
愛は、一度1人でじっくり見るかどうかと悩んでいたので、気が合ったので翔と見ることを決めたのだ。
「映画楽しみだね」
「うん、愛くんと観れるって楽しみにしていたんだ」
「僕も同じだよ」
心がほんのりと温かくなる。
「映画良かったね!楽しかった」
「うん、僕も楽しかった」
「この熱が冷めぬうちにノートへ書き起こしたいから、カフェ行こう!」
「いいね。この近くにいい場所があるんだ。そこ行こうか」
映画も終わって、流れるようにカフェへ行くことになった。
翔に連れられてきたカフェに行くと、偶然にも歩と望が鉢合わせした。
この2人、愛に言わずにデートをしていた。
愛も何も知らないのは無理もない。
「歩兄さん、望兄さん。一緒にお出掛けしていたんだ」
「うん、そうなんだ。私と望、これから映画見に行くから、今出るところなんだよね」
「そうなんだ。じゃあ、急がなきゃね」
「ここのコーヒーおすすめだぞ」
そういい置いて、足はやに店を出て行った。
翔と愛は、店員に案内されて入ってきた。
「コーヒー美味しいって言ってたね。何にしようかな〜」
ご機嫌そうでなにより、そんな言葉が頭に過った。
頼むものが同じになった。スタンダードのコーヒーもいいが、アレンジされたコーヒーも美味しそうということだ。
「茶香によく来るとは思っていたけど、本当に甘いもの好きなんだね」
「うん、そうだね。歩兄さんが甘党ってこともあるんだけどね。自然と甘いもの選んじゃうかな。翔くんも茶香で働いているけど、普通に甘いもの選んでたよね」
「僕の場合、職業病かな」
「リサーチしているってことかなー。凄いなっていうのは失礼だね」
楽しくおしゃべりしていると、注文していたコーヒーがやってきた。ついでに頼んでいたご飯も
このお店、昔ながらの喫茶店ということもあってかレトロなメニューもあった。
お昼ということもあり、お腹空いていた。
翔はカレー、愛はナポリタンだ。
「「いただきます」」
食べ始めると、無言になってしまうのであった。