二章
仕事は恙無く、午前を終えた。
時刻はお昼11時55分ーー、そろそろお昼の休憩時間
この会社、工場とは別に食堂があり、お弁当を持ってきている人たちはそこで食べているのだが、最近人が増えてきている。
(そろそろ食べる場所考えなくちゃならないかな)
愛はこの食堂で昼食をとっていたが、食堂で食べている人が何せ多いのだ。
パートで働きにきているおばさんたちが占領していることもあるのだが、如何せん人が多い。
「水城くんと藤崎くん、お昼ご飯は持ってきている?」
「朝、セブンで買いました」
「俺も買ってきた〜」
各々用意しているということで、一度は食堂へやってきた。
すると、場所を用意していてくれていたようで、招かれた。
「ああ、来たね。愛くんの隣空いているから、そこ座って!」
どうやら場所を確保していてくれたようだ。
「ありがとうございます。2人ともこっちだよ!」
テーブルにお弁当を置いて座る。2人は、愛の目の前の席に座ることにしたようだ。
隣には別の人が座っていたから
金城凛人ーー、去年入ってきた愛の後輩であり、別部署の人だ。仕事している場所が別だが、この2人隣り合って座っているから、仲が良いことで有名になっている。
「愛さん、こんにちは。新しく入ってきた子たちの指導お疲れ様です」
「凛人くん、こんにちは。そうそう、今日から僕が担当になったんだよね。紹介するねーー」
「初めまして、水城煇です」
「藤崎明って言います」
「よろしく、金城凛人です」
柔かに笑っているが、目の奥が笑っていない煇の顔を見た凛人だった。
煇の顔を見て、また厄介な人に好かれたんだと悟った凛人であった。
包まれているお弁当を広げていく愛を見ている煇は尋ねる。
「いつもお弁当持ってきているんですか?」
「うん、そうだよ。自分で作っているんだ」
「へえ、器用ですね。僕もある程度は出来るんですが、時間かかってしまうのでお弁当までは手が出なくて」
「慣れると楽だよ。僕は、お弁当だけじゃなくて家族のご飯も全てやっているのもあるかな」
「素晴らしいと思います」
愛を見る目が煌めいている。感心もあるのだろうが、愛が作ったものが食べたいという欲もある。
「料理だけなくて、お菓子作りもするよ。今日はなんと焼き菓子です。凛人くん、明くん、煇くんどうぞ!」
昨日作った焼き菓子を3人に振舞う。
たくさん作ったせいか、家族で消化できない量になってしまう時もあるらしく、そういったときは会社に持ってくることもあるが、今日は新人が入ってくるということもあり、多めに作っていた。
「本当いつも色んなもの作りますね。今回は、食べやすいようにクッキーですか」
「凛人くんは、チョコクッキー好きっていっていたよね。荒く砕いたんだ!」
「美味しいです。流石、愛さんですね」
「よかった。凛人くんの口にあったようで」
愛と凛人の仲がいいことに煇は妬いていた。
(これから仲良くなれば、イチャイチャ出来る!)
そう心に決めた煇であった。
横で見ている明は冷めた目をしている。正直馬鹿らしい、そんな感情を抱いていた。
仕事と恋愛は別物、明はそういった信念を持つ青年である。ーー特に社内恋愛は御法度
明は、愛が最初から気に食わない人だと気持ちを抱いている。
(この焼き菓子、めっちゃ美味しいなんていってやらないけど)