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魔法博士と弟子兄妹  作者: 方円灰夢
第五章 氷の王国
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【十八】 リュカの結婚

成人式の翌日、ノルドハイム王国使節団が早朝帰国の旅路についたあと、メシューゼラはコロニェ教会領から自分あてに届いた贈り物を開けてみてびっくり仰天。

急いで第二離宮、ディドリクとアマーリアに見せようと、走っていった。

メイド達への取次ぎ、挨拶もそこそこに、バタン、と勢いよく兄妹の勉強部屋のドアを開ける。

最近はここを、講読会や読書会にも使ったりしていた。


ところが中に入ってこれまた驚いたことに、アマーリアが炎に包まれている。

「ひっ!」と声を出してしまうメシューゼラ。

だがその火はまるで吸い込まれていくように、アマーリアからディドリクの腕の中に戻っていく。

「ディー兄さま、アマーリア、いったい何を」

思わず口がパクパク状態になってしまうメシューゼラ。

「どうしたんだいゼラ、僕達の方こそ驚いたよ」

「いったい、なにをしてるの?」思わず大きな声が出てしまうメシューゼラであった。


騒ぎになるとまずいので、メシューゼラを部屋の中へ入れて扉を閉じて、落ち着かせる。

「魔術の練習だよ、アマーリアにも少しね」

「え、でもそれって、炎術よね、アマーリアったら、もう?」

正確には炎術ではなく、法術で言うところの「熱場」の応用なのだが、発現状態は大差ないので、炎術と言うことにしておく。

「アマーリアが使ったのではなく、アマーリアはその炎術に対する防衛練習だよ」とディドリク。

「え! 私もやりたい!」

たぶんそう言うだろうな、とは思っていたが、実際そう言われると、ちょっと対応に苦慮してしまうディドリクである。


「うーん、防衛練習は危険だからなぁ」

「じゃあ私が火玉を打つから、アマーリアがそれに対する防衛練習をやれば」

「もっと危険だ」

「私もやりたぃぃぃ!」

少し困ってしまうディドリク。

そもそもメシューゼラが言う魔術を基点にした防衛術と、今アマーリアがやっていた法術を基点にした防衛術はメカニズムから過程からまったく違うのだが。

そこで仕方なく、

「そんなことより何か用事があったんじゃないのかい?」と言ってみたが、

「あー、そうやって話をそらそうとしている」と指摘されてしまった。

アマーリアはくすくすと笑っている。

「でもゼラ姉さま、ほんとになにか重要な用事があったんじゃ」と聞いてみてくれた。


「もう、アマーリアまでそう言うのなら、仕方ないわね」

そう言ってメシューゼラは持ってきた紙の箱を部屋の中に持ってきた。

「これは?」とディドリクが聞くと、

「コロニェ教会領から今回の私の成人式用プレゼントだって」

そう言って箱を開けて、中のドレスを引きだしてきた。


「ほう、これは...」

「ゼラ姉さま、すごく綺麗です」

そう、中からイブニングドレスが二着、出てきたのだ。

一着は半透明の銀色生地で縫い上げたショートドレスを軸にして、青糸、金糸で軽やかな装飾リボンが加工された妖精のような衣装。

もう一着は、黒と赤を基調にしたロングドレスで、ゆったりとした帯と相俟って、アダルトな雰囲気を醸し出している。

もちろん細かな採寸・調整はまだこれからだが、この素材を用いた姿が容易に想像できる魅力的な衣装。


「こういうのはコロニェよりガラクライヒ王国の方が贈ってきそうだけど」とディドリクがもらすと、

「そうよね、でも聞いてみると、選んでくれたのはフガートさんなんだって」

なるほど、コロニェ教会領は贈り物をしたけど、おそらく漠然と「何か贈り物を」と商会に頼んだだけなのだろう。

そこで具体的に商会が、たぶんフガートだけでなくミュルカも巻き込んでこれを選択したのだろう。

費用はコロニェから出るし、採寸を含めた仕立て直しで、あらたにフネリック王国から商会に金が入る。

(さすがは商会だな、こういうところは抜け目がない)と思うディトリク。

しかしこういう嬉しくなる贈り物の手配であれば、それはそれで歓迎だ。


二人が感心しながらそれを見ていると

「さあ、これで私の用事はすんだわ、防衛術を教えて」

ディドリクはメシューゼラにも少し事情を教えておこう、と思い、部屋の中へ招き入れて、結界を張り、遠征計画のことを少し話す。

「防衛術って、そのための?」

「まだ具体的には父上には言ってないので、秘密だよ、もちろんパオラ様にも」

「はい」と返事はしたものの、しばらく考えこんでいるメシューゼラ。

「遠征隊と呼んでるけど、別に攻めこむわけじゃないよ、暗殺隊について、調べてこようと思ってるんだ」


「アマーリアに学ばせているってことは、アマーリアも連れて行くってことよね?」

的確についてくるメシューゼラ。

「もちろん、その水準になれば、だけどね、そもそもすぐの話じゃないし、計画を練る時間や、ちゃんとした名目も必要になるし」

まだ少し考えていたが、やがて顔を上げて、恐ろしいことを言い始めた。

「決めた! 私もついていきます! だからそれまでになおのこと、しっかりと防衛術も練習しないと!」

ディドリクは深いため息をもらしてしまうばかりだった。



やがて二年の歳月が流れる。

ガイゼルが21になり、婚約が決まった。

相手はコロニェ教会領に嫁いでいた父王エルメネリヒの従妹エーリカの娘シャルロッテ16歳。

ディドリクも面通しだけはしたが、なかなか可憐な、おとなしそうな女性。

もっとも、見た目だけだったので、実際にはどうなのか、というところまではわからなかったが。


ディドリクは18になり、文書課アルヒーフの長となっていた。

同時に、外交省の王族顧問も兼務し、外相クーゲルスタムと同格の立場になる。


メシューゼラは15歳に、アマーリアは10歳になる。

アマーリアはディドリクから法術の基本を、時折ベクターから実践的法術を学び、かなりの水準になっていた。

ただし、もっぱら防御専門で、結界、心理障壁、等については、ベクターによると「どこへ出しても恥ずかしくない」水準らしい。

ディドリクもほんの少しだけ雷撃を学ばせてはいたが、それがどのくらいの攻撃力を持つのか怪しかったので、もっぱら防御専門、と言い含めている。

メシューゼラについては、もともとの魔力適性が高かったためか、炎術がかなりの域まで達成していた。


国内情勢は大差なかったものの、グリス州がなんとか生産性を持ってきているらしい。

コルプス男爵の誠実な人柄も相俟って、農民となった州民たちともうまくいっているらしい。


王家の近辺で一番の出来事は、もちろんガイゼルの婚約だったが、その次が、メイド・リュカの結婚と妊娠。

正確には妊娠の方を先に聞かされたため、マレーネ家の者は皆たいそう驚いていた。

ディドリクも幼い頃から家にいてくれたメイドなため、驚かされたけど、相手の名前を聞いてさらに驚いてしまう。

王立学院時代からディドリクの護衛役を務めてくれていたレムリックだったからだ。

「いったいいつの間に」

報告を受けたときレムリックを見てこの言葉を発してしまった。

「いやあ」と嬉しそうな、恥ずかしそうなレムリック。

王国に限らず、帝国諸侯では結婚式には政治的意味合いの方が高いため、式は王族、貴族がするもの、という認識。

平民は富裕な層はするようだけど、平均的な平民はやらないことが多い。

婚姻の届け出ももっぱら教会に出すだけのことさえある。

そこでマレーネが音頭を取って、離宮内でささやかな式典を行った。

まさか王族に祝ってもらえるとは思ってなかったリュカは、感激の涙がとまらなくなってしまい、一騒動になる。

孤児で血縁の者もいなかったが、そこは出身の孤児院から何人かに出席してもらったりもしていた。

レムリックの方は故郷から両親兄弟を呼んで、それなりの式典、報告になる。


結婚式ではすでにお腹が大きくなっていたリュカ。

式のあとしばらくして女児を出産したが、メイドを続けたい、とマレーネに請願書を出していた。

とはいえ、新生児を抱えたまま住み込みでのメイドなどはとてもできないため、しばらく養育期間をおいたのち、離宮内に住みながら、という線に落ち着いた。

離宮内にあるメイドの寮ではさすがに落ち着けないので、レムリックが所属する詰所から空いていた家屋を一つ、使うことになる。


そんな二年間が過ぎ去っていき、いよいよディドリクは遠征計画を煮詰めていくことになる。

名目は、大使派遣に決まった。


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