深夜の街
子供は寝静まり、大人は飲食店で酒を飲む。
居酒屋からは活気のある声が響いてくる。
大人とも子供とも言えない人たちの一部は大人になろうと繁華街を動き回る。
それを取り締まろうとする教員もちらほらと。残業お疲れ様です。
そして動き出す人たちもいる。
彼らは暗い方が動きやすいのだろう。彼らは静かに行動を始めている。
そして私もそのうちの一人だ。ここからが、私の仕事の本番だ。
ビルの屋上、夜風が心地よく身に沁みる。
髪は風に靡き、服もひらひらと舞い踊る。
両端に刃のついた特別製の大刀とでもいえばいいだろうか、右手と背中で両端に刃のついた長い棒を支える。
上着が風に吹かれてチラリとベルトにつけられた拳銃が見える。
眼下に見下ろすは深夜の街。
誰もが知る街は様子を変えて全てが暗部に覆われて。
目を閉じて、息を吐き、目を開けると、ビルの縁を蹴り空に舞い上がる。
慣れたようにトントンと建物の上を跳びながら移動する。
力強いものではなく軽やかに蝶の如く目的の場所へ飛んでいく。
人では有り得ない身体能力で。
車よりも速いスピードで。
誰の目にも映らない。
誰も自分のことを見てはいない。
ただ綺麗な街を駆けて。
その感覚に身を委ねる。
心地よく楽しく疾走する。
髪は舞い踊る。髪の先までが疾走する私についてくる。
美しく艶やかに軽やかに夜の蝶々は風と戯れる。
暫く駆け続けると目的地が見えてくる。
肌寒い風が我が身を引き締める。
気を引き締めろ。
仕事の時間だ。
<次回> 「夜の世界」 6月5日 投稿予定