一家惨殺事件2
事件の発覚から十日が経った。
ここまで事件の進展は見られなかったのだが、ここにきて凶器が発見された。
発見されたのは近くにある公園の茂みの中。いくら近所とはいえ十日くらい時間がなければ捜査の手は伸びなかっただろう。逆に、十日も捜査が続けばそんな近くの公園は捜査範囲内となるのだ。いくら隠そうとしたって警察に突き止められないはずが無いのだ。
残念ながら指紋はついていなかったがなんてことはない。
凶器は圧倒的な証拠になりうるのだ。
更に、凶器発見の前夜に不審者がその公園を彷徨いて茂みを探っていたという情報が入ってきていた。
百六十センチくらいでフード付きの上着とズボンを履いていて、髪は肩上だったそうだ。
これは証拠隠滅のために訪れた犯人に違いない。
そうして見つかったのが十四歳の少年で、名前を荒井寛之という。
髪は肩上でサラサラ、前髪はなく、サイドに短めの髪がある。丸眼鏡が特徴的だ。灰色のフードにジーパンという服装から地味に見えるが、いい服を着せたら中性的な美少年になりそうだ。表情は暗く、その目は何も映していない。
少年はこの地域の小さな家にに母親と二人暮らしをしていた。しかし、学校には一度も顔を出していないらしい。教師が家を訪ねても、小さい頃は「病弱だから学校には行けない」と、成長すると「対人恐怖症で家を出るなんて不可能だ」と彼の顔を見ることさえできなかった。
数年前、母親は死亡し、少年は施設に入るも、すぐに失踪。もともと住んでいた家ですぐに発見されるも、人が怖いという訴えと籠城から無理強いできず、定期的にインターホン越しで見回りをしていた。
どうやら、母親の蓄えで暮らしているようで生活に困っている様子もないが、学校に顔を出したこともない。夜は徘徊していたという情報も上がっていたが、その情報すら定かではない。
そして、現在、目の前にその少年がいる。
容疑者が未成年ということから逮捕という報道を上げる前に事情聴取を行うこととなったのだ。
場所は警視庁の取調室。対人恐怖症の彼には悪いと思ったが、こればかりは仕方がない。
配慮が功を奏したのか彼の発作が出る様子もない。
彼が落ち着けるように一つのリュックサックのみ携帯を許していた。中にはスペアの眼鏡と空の眼鏡ケース、そして小説と筆記用具が入っていた。通信端末や刃物などは見当たらなかったので、見逃したのだった。
そして対人恐怖症の彼に配慮して私以外の捜査員は部屋に入らず覗きをする捜査員も下がらせた。自白や話せるようになったら、入れる予定だ。それに、この事情聴取が対外にバレないようにという配慮の一つでもあった。
<次回>「少年の罪悪」7月11日投稿予定




