タチバナの所業
橘は梢が獲物を殺すのを見届けると、ヘッドホンを首にかけ目を瞑りゆっくりと息を吐く。
そうすると彼女の体は煙のようなものに包まれ、髪と身長が伸び、顔つきが少し大人びた。
妖艶な美女の耳は猫のようで2本の尻尾が服の上から生えているように見える。綺麗な黒髪はさらに伸び、彼女の目は少し金色に輝いた。
姿を変えた彼女は何もない空中に手を翳す。するとそこにちょうど腕が入るくらいの黒いブラックホールのような穴が出現し空間が歪んだ。その中で何やらゴソゴソと探して手を引っ張り出すと、その手には赤い鳥籠のようなものが握られていた。彼女が手を引っ張り出すと同時に穴は消え空間の歪みも元に戻る。
そのような超常現象を彼らは何でもないように見る。さも、それが当然のことのように。
(ん、魂出てきたね。これまた濁っている、けど、それ程でもないね。周りは迷惑だったかもしれないが、最後の以外は大したことが無い、小悪党だからかな。)
橘は遺体の少し上を見て、無言でそう考える。
しかし、彼女以外の目には何もうつらない。そこには何もない。
彼女は無言のまま、鳥籠を開けて、遺体の上で軽く振り回し、素早く鳥籠を閉めた。鳥籠の中をじっと見て満足すると他に向き直る。
「死亡確認完了しました。ご協力有難う御座います。これで復活というか反魂的な術はほぼ不可能となります。」
問題ありませんね、という目線を向けると、各々が同意した。
橘は片手をヘッドホンに置き、もう片方の手で鳥籠をもって、にっこりと笑った。
その爽やかな笑顔は、妖艶な美女に似合わず、幼い子供が悪戯に成功したときの笑顔に似ていた。
<次回> 「解散」 6月16日投稿予定




