蛙の終わり
左京は現れると辺りを見回した。
「わっ。警護社もいるじゃないですか。何事です?」
明らかな嫌悪ではないが、機嫌がいいわけではないことが分かる。
渓は左京を案内し、梢は軽く手をあげ挨拶をする。橘は軽く会釈をした。
「よく分かりませんけど、色々あったんですね。それで、何について視ればいいんですか?」
カジュアルな白いブラウスにサスペンダーをつけ、動きやすい幅広の長ズボンを履いた左京は、ひとつに纏められ三つ編みされた長い白銀の髪を揺らしながら聞く。
「此度、彼奴らが夜に破格で買った銃火器を昼で売り捌いたのじゃ。彼奴等は大儲けをしたらしいんだが、それを煽ったり助言したりした人物がいるのではないかと推測しておる。そういう奴らについての情報が欲しい。」
梢は簡単にあらましを説明した。
そうすると左京はウンウンと頷いて倒れている人らに向き直って尋ねた。
「君らの計画を扇動したり助言した人物について知っていることはないかな?」
尋ねるというよりも呪文を唱えるように口ずさんだ。
彼女の青い目をくりっと見開いて、じっと虚空を見つめる。その姿は可憐だ。
「ふむ。扇動・助言をした人物はいる、ってことしか分からないです。パッと浮かんだことから、存在は認識していると言えるでしょう。でも知り合いにしては情報量が少なすぎます。記憶も曖昧なようです。例えば酒場かどこかで話しかけられたとかですかね。会った場所くらいしか引き出せませんよ。見た目はいくらでも偽装できるので。」
三人に向き直って自分の見解を述べた。
そうすると、梢が一番話せそうな奴に近づき、質問をした。
「今回の計画に助言をした奴に会うたのは何処じゃ。」
すると相手は怯えたように答えた。
「バーです…あの、ここから一番近くの駅の裏に一軒だけあるBAR HIKUDANOBABAってところです…」
左京は答える相手をじっと見て、やがてこう言った。
「嘘は言ってないです。これで視える情報がなくなりました。これ以上は何を聞いても無駄だと思います。」
そう答えるのを聞くと全員で顔を見合わせる。
「なら、もう用済みじゃな。殺そう。妾が全員片付けるが問題ないか。」
感慨もなく無表情でそう言って刀を抜いた。
そして獲物に体をむけ、視線だけを他の三人に向ける。
「梢様がそうおっしゃるなら。」
「元より、そちらに処分は一任するということでしたので問題ありません。」
「梢さんが言うなら私は拘りません。」
渓、橘、左京が順番に異議がない事を表明する。獲物に目を戻して、一息吐く。
「決まりじゃな。」
その瞬間に、獲物の首は全て撥ねられた。
血飛沫までもコントロールされていたため、味方には当然のこと、刀にすら血を滴らせることはなかった。
その刀は鞘に納めると、また傘となり、彼女を彩る一部となるのだ。
彼女の美貌は、彼女の技術と重ねてきた時、そして殺してきたものたちの血が創り出すのかもしれない。
<次回>「タチバナの所業」6月15日投稿予定




