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昼と夜の交わり  作者: 泡沫
昼に生きる夜の蝶
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蛙大海を知る2


 梢は永井のナイフを危なげなく避けていた。


 何回か避けると相手の後ろにまわり込み、拘束した。

 寝そべらせて後ろ手に捕まえて桜田の様子を見せつける。水島は少し驚いた様子を見せたが暴れて抜け出そうとした。


 そこで梢は()()()手を離した。


 その間、片手に持った傘を手放していないし武器も使っていない。

 しかし、そのような事情も知らない永井は梢は力のない女だと誤った認識を得てしまった。ちょっと暴れれば抜け出せる相手である、と。


 「ちょこまかと逃げたって所詮は力のない女だな。桜田はヘマしたみたいだが、俺はそうはいかねぇ。じっくりと服を切り裂いて美味しく頂こうじゃないか。」


 永井は完全に相手を舐めきり、下劣な考えを隠そうともしない。

 更に、"服を切り裂こうとしていたから当たらなかった"という、めでたすぎる勘違いまでしてしまった。


 梢の目は捕食者のそれだ。ただ目の前の獲物をどう食べようか思案している。

 梢も当然のように他の標的の様子を見て、渓が終わらせたことを知っている。


 (渓はうまくやったようじゃな。最後に力を使っていたが、逆に絶望がましたようで何よりじゃ。そういう使い方は積極的にやっていかねばな。タチバナの奴は妾の戦いを観戦する気のようじゃ。仕事が終わっていないのに生意気な。その根性、悪くはないが、苛つくのぅ。)


 梢は働けとオーラやイライラを込めて橘にガンを飛ばした。


 彼女自身、人を盗み見て自分を伸ばしたり、情報を得たり、ということを奨励しており、実際、タチバナがやっていることを悪いと思っていないし、寧ろその根性を好いているくらいなのだが、自分が見られていると少し思うところがある。

 自分を見て盗むことを奨励しつつも堂々と見られるとちょっとイラッとするなんて矛盾したことを考えている。

 何より、今は仕事である。いいことでもやっぱり、働けよ、と思ってしまうのだ。

 それでも自分から盗もうとするならそれも良しとする器量を持ち合わせてもいる。梢は後進が育つことに喜びを感じているのだ。


 タチバナが自分の獲物を見たことを確認すると自分も相手と向き合う。


 彼女は少しずつ相手の位置をコントロールしてたくさん銃などの武器が置いてある場所に誘導している。それも、相手が誘導されていると気付かないくらい巧みな動きで。


 (そろそろ終わらせようかのぅ。)


 彼女は相手を目的の場所まで誘導すると、ナイフを傘で一閃し、永井のナイフを落とす。

 ナイフが落ちたことに動揺した隙をついて蹴りを入れた。

 渓の蹴りは彼女直伝なのだ。


 当然梢は手加減をしており、まだ永井には意識が残っている。


 永井は蹴られた痛みを感じながら、同時に女に軽々と蹴り飛ばされたことに怒りを感じていた。その感情は泥のようにまとわりつくようで、とてもいい感情とはいえない。

 その感情をまっすぐに梢に向ける。


 そこでふと見つける。



 それを見て、彼の口角が上がった。



 これで勝てると。



 (どんな奴でも銃の前には無意味。)


 笑いが込み上げてきた。

 彼女を犯すのもどうするのも後で構わない。

 ただただ、滅茶苦茶にしたい。


 永井はサブマシンガンを手に取り、梢に向かって連射した。

 しかし、永井は銃撃訓練を受けたことがない素人だった。故にその銃の反動を受けるので手一杯、逆に動けなくなってしまった。

 だが、彼は動けなくてもそれでいいと思っていた。

 銃を前に人は無力だ、と。



 しかし、不幸なことに相手は梢である。


 彼女は永井が手に取るのを見て、初めて()から()を抜いた。そして、全ての弾丸を切る、弾道を曲げる、叩き落とすなどした。

 本来、避けるだけで十分だったが、永井を絶望させるために、全ての弾丸に()()したのだ。



 弾丸の嵐が止んだ時、彼女は永井の目の前に立ち、銃を切り捨てた。

 実際に真っ二つにしたわけではないが、銃の構造を理解している彼女は、銃を確実に使用不可能にしたのだから同じだろう。そのことは永井には知る由もないが。

 そして永井の首筋に刀を当てた。

 彼の首筋からは血が流れでた。その事実に永井は背筋が凍る。

 腰が抜け、声が出せない状況に追い込まれた永井は股から暖かい液体を漏らしてしまった。



 (汚いのぅ。時間が経たなければ匂いはましだが。タチバナよ、早く終わらせるのじゃ。)




 この時点で二人の決着はついたのだ。


<次回>「蛙大海を知る3」6月12日投稿予定

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