狩人の嗜み
私は水島の攻撃を避け続けながら、姐さんや渓さんを見ていた。
彼らの方が経験も能力も上なので少しでも学べることがないのか探すのだ。
"見て学べ"と言うだろう?あと、"技は盗め"だったか?
渓さんはやはり、服装や調度のセンスが気になっていたようで、グサグサと責めている。
相手が動けなくなってからも批判は止まることを知らず相手の心を折っていく。
さらに肩を折り、痛みに叫び声をあげている男を見ながら恍惚とした笑みを浮かべている。釣りあがった唇を見ていると流石に標的さんに同情したくなる。だから甘いと言われてしまうんだな。
叫び声が聞こえないのは快適だ。私の相手も渓さんの標的がやられたことに気づいていない。
これは恐らくは渓さんの能力とかによるものだと思うのだが、詳しくは知らない。
渓さんは不快でしかない悲鳴を聞いているはずなんだが...。私だったら耳を塞ぐのに、彼はそんな素振りを見せない。我慢強いと最初は思った。
だけど渓さんは嬉々としてそれを聞いている節がある。
それを悟ったとき、私は怖いので敵にまわしたくないと思った。
姐さんは武器を使った戦闘が得意なはずだが、武器を使うまでもなく相手を翻弄していた。
動けなくして渓さんの標的の様子も見せつけて心を折りにいっている。相手を武器の方へ追いやっていることから、武器を使わせてそれすら弾き、完全に敵わないと思わせる心算だろう。
そう考えながら観察していると、姐さんに睨まれた。どうやらバレていたようだ。
ちょっと気まずい。
ちゃんと仕事をしようと私も相手を見る。
先程から攻撃を避け続けているが相手の心が折れる様子もない。少し焦っている程度だ。周りを見る余裕もないのか渓さんの標的の様子に気付いていないようだ。
今回の"心を折る"というのは姐さんの思いつきであくまで娯楽だ。
ただ仕事をしてもつまらないからルールを決めたということだ。
だから失敗しても実害はない。
けれど、実際に心を折ることが仕事の達成条件になることもある。
これは丁度いい練習台なのだ。
だから、簡単に狂ってくれるなよ。
どう調理しようか。
私は獲物をみて舌舐めずりした。
<次回> 「蛙大海を知る2」6月11日投稿予定




