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 帰宅後、一眠りした私は書き物机に向かう。


 真新しい本――この世界、大学ノートやルーズリーフみたいなものはない。どちらかというと日記帳みたいなものが主流だ――を開き、ペンを手に取り、覚えているだけの攻略対象の基礎情報の他、日常会話やイベントで発覚する追加情報に重要なフラグなどゲームの情報を()()()()書き出していく。万が一他の人に見られても、日本語で書いていれば読めないので不審がられることもないでしょう。見られたら落書きだと言い訳するために端や空いたスペースにテキトーな絵を描いておきます。


 ◆  ◇  ◆  ◇  ◆  ◇  ◆  ◇


■ ウィリアム・クラウン。アヴェンシア王国王太子。18歳。

 金糸の髪に深い青の目。眉目秀麗、頭脳明晰、運動神経も抜群で剣の腕は騎士団長にも勝るとも劣らず、さらには魔術の腕も凄い()()()

 らしい、というのはウィリアム王子が魔術を使用したのを見た人がいないから。ウィリアム王子は国民の前で魔術を使用しない。絶対に。

 なぜならアヴェンシア王家は代々『光』属性なのだが、ウィリアム王子は『闇』属性なのだ。

 この世界の『闇』属性は別に禁忌というわけではないのだが、王家に生まれながら『光』ではなく『闇』属性であることをウィリアム王子は悩んでいて故に必死に隠している。この事を知りヒロインが解決するのが彼の攻略ルートだ。

 今は6歳。ウィリアム王子は現時点でも変わらず王子として城にいるはずなので、攻略に関しては基本ゲームと同じで良いはずです。


■ クロード・アルシオーネ。王子の専属近衛騎士。19歳。

 濃い銀の髪に赤い目。ツリ目の美形だがどこか達観したような表情に掴みどころのない飄々とした言動。実力はあるのだが、不真面目で女性関係がとても派手なナンパ男。

 彼の家であるアルシオーネ家は代々騎士の家系。そのため長子である彼も当たり前のように騎士となることを強要され、そのため鬱屈したものを抱え込んでいる。天才肌なことも彼にとって災いした――何事にも真剣になれないのだ。

 そんな彼の本音を引き出し道を示してやるのが彼のルート。

 今は7歳。たぶんアルシオーネ家で騎士になることを強要されてもやもやしたものを抱えつつ頑張っている頃だろうか。彼もたぶん、ゲーム通りで大丈夫なはず。


■ アベル・エリシオン。黒の騎士団第二部隊所属の騎士。24歳。

 青銀の髪に紫水晶(アメジスト)の目。分け隔てなく接してくれる誠実さと柔らかな物腰、将来団長間違いなしと言われるほどの剣の実力者である上位騎士様。

 ヒロインがユニシェルだった場合は会話して順番にイベントを起こしクリアしていけば簡単に兄妹エンディングにたどり着くが、もう1人のヒロインの場合は騎士団の団長とエリシオン家の当主、どちらを取るべきか板挟みになる彼の話を聞いて支えてあげるのが彼のルート。

 今は12歳。私の兄様なのですでに出会っている。この先は妹として支えていけば…? アベル兄様の進路については女神様復活後に改めて父様や兄様たちとしっかり話し合いましょう。


■ ロジェ・アリオン。黒の騎士団第二部隊々長。29歳。

 白に近い茶髪に緑の目。アベル兄様の直属の上司で沈着冷静で実力はピカイチな上位騎士。しかし、一度(ひとたび)仕事を離れると途端に…控えに言ってダメ…残念…アレな、人。私生活では物凄いものぐさで食事摂るのも面倒くさがり店に行くならまだ良い方。下手したら部屋にあったパンの耳齧って終わり。生活能力ないにも程があります。

 そんな彼はヒロインに出会い変わっていく。ユニシェルの場合は天真爛漫な貴族令嬢に振り回され面倒を見ることで、もう1人のヒロインの場合は彼女に甲斐甲斐しく世話を焼かれることで、段々と私生活が変わっていくというのが彼のルート。

 今は17歳。騎士団入団は18からだから…あ、ダメです。騎士団入団前の彼がどこで何をしているかは情報がない。出身地の話とか聞いた覚えもないので王都にいるかもわかりません。しかし、1年後ならば騎士団に入団するはず。騎士となった彼なら警備士として街でも出会えるし最悪騎士団に行けば会える、はず。


■ カイン・エリシオン。魔術院所属の魔術師。24歳。

 青銀の髪に紫水晶(アメジスト)の目。魔術院に所属する上位魔術師で根っからの研究者。とにかく自分の欲望優先で、仕事では魔術の、私生活では園芸に精を出している趣味人。寡黙であまり表情が変わらないため誤解されがちで、魔術院の方で若干人間関係が拗れたりしているが本人あまり気にしていない。

 自分が好き勝手しているため、家の責任が双子の兄であるアベル兄様が被ってしまっていることへの罪悪感や自分にないものをたくさん持っている事に劣等感を抱いているためゲームでは少しアベル兄様に対してギクシャクしている。

 ヒロインが間に入りアベル兄様や他の人達と和解するのが彼のルートだ。

 今は12歳。アベル兄様同様、このまま私が間に入っていればたぶん大丈夫なはず。


■ ラウル・トライベッカ。魔術院所属の見習い魔術師。14歳。

 薄緑の髪に灰色の目。元魔術院最高位であったライアン・トライベッカの孫であり自身も魔術の才能溢れる天才魔術師。プライドが高く魔術至上主義で魔術師以外は見下し高慢な振る舞いをする困ったお子様。そのため日々街の人や魔術院、騎士団と衝突している。

 魔術をもっと認めさせたいと思っていてそのための努力を本人なりにしているつもりだが、残念ながら彼のせいで魔術や魔術師がさらに誤解されていくという悪循環。

 内心では仲良くしたいと思いつつ、プライドが邪魔して素直になれない彼を時に叱り時に諭し、街の人たちとの間に立って和解させるのが彼のルートだ。

 今は2歳。トライベッカ家で過ごしているだろうからトライベッカ先生経由で会える確率大。


■ エルキュール・シルビア。吟遊詩人。26歳。

 金髪に藍色の目。貴族シルビア家の正妻の長子で跡取りでもあったが、両親が物凄い貴族主義で特に父親がドクズ。愛人何人も侍らせ子どももたくさんいた為跡取り問題で家の中はドロドロ。彼を蹴落として跡取りになろうとする異母兄弟たちに利用しようと擦り寄る大人、さらにはそんな中支えてくれたと思っていた恋人に裏切れ家を出た。登場時は『エル』と名乗っている。

 貴族嫌いで人間不信、女性不信な彼はすっかり心を閉ざし出会った当初は拒否られまくる。特にユニシェルは貴族なので、仲良くなるまでがとても面倒。生きることに絶望しすっかり退廃的になってしまっているので気を抜くとすぐに行方不明生死不明になる。

 そんな彼の心を癒し、生きる希望を取り戻させるのが彼のルートだ。

 今は14歳。まだシルビア家にいてドロドロな人間関係に僻癖しつつ恋人に支えられている頃? 恋人に裏切られたのがいつかわからない上にシルビア家って王都にあるのでしょうか。なかったら吟遊詩人として現れるのを待つしかなくなります。


■ ケネス・キザシ。旅の商人。20歳。

 オレンジの髪に同色の目。あちこち旅をして珍しい品を買ったり採取したりしてそれを王都のバザーで売って生計を立てている旅の商人。明るく人当たりが良く顔が広い、根っからの善人でヒロインの事も転移者だろうが貴族だろうが分け隔てなく接してくれる。過去に災害に巻きこまれ家族を亡くし、さらにその時の傷が左手に残っているため包帯で隠している。

 面倒見がよいため他キャラ攻略時は良き協力者になってくれるが、自身のことには超絶鈍いため恋愛に発展しづらく意識してもらうまでが長い。とても長い。

 自覚した後、ヒロインの立場――転移者や貴族――を考え身を引こうとする彼に諦めさせないようにするのが彼のルートだ。

 今は8歳。旅の商人としてヒロインが16歳になるまでは登場しないと思っていたが、すでに出会った。しかしゲームとの差異からもしかしたら彼の未来が今なら変えられる? 一考の価値ありです。


■ ノエル。ユニシェル専用の隠しキャラ。14歳。

 この世界では珍しい黒髪に金目。容姿に加え『闇』属性なこともあり不気味がった親やそのまわりに街外れの別宅にほぼ軟禁されている少年。夜のうち、さらには別宅のある森の中しか外出を許されないため11月1日にある聖夜祭の夜――その時のみ、ユニシェルは平日夜中に外出出来る――に出会わなければ知り合うことも出来ない隠しキャラである。

 隔離されて育っているので世俗に疎く、最初は他人との接し方がわからずとんちんかんな言動があるが根は素直で良い子。実は王族、つまりウィリアム王子の実弟。その存在は秘匿されていて王族他重鎮たちの中でもごく少数しか知らない。国民たちには第二王子は死産だったと発表されている。

 容姿への差別や彼への不当な扱いを正し、第二王子として認めさせるのが彼のルートだ。

 今は2歳。すでに別宅にいるはずなのだがさすがに2歳では森を1人出歩いてはいないだろうから、もう少し成長するのを待たなければならないかな。私自身も4歳で夜中の外出は無理だろうし。


 ◆  ◇  ◆  ◇  ◆  ◇  ◆  ◇


「…ふむ」


 一気に書き出し、息をつきペンを置く。

 ざっと確認する――現時点で手掛かりなく所在不明なのはロジェ隊長くらい? 王子は城…父様に会いに行く(てい)で行けば会える? いや、宰相の執務室に王子はいないか。クロードとエルの貴族組は、アルシオーネ家とシルビア家の場所さえわかれば…地方貴族でなければ出会える可能性はある。ラウルはトライベッカ先生経由を頑張りましょう。ノエルはもう少し待つ方向で。


 何度か読み返す。未来の改変が必要そうなのはさしあたってケネスぐらい? 家庭環境などは私にはどうしようもないので、友人として支えていく方向で。恋愛イベントは起こさないよう気を付けましょう。それにかまけてメイン失敗、生贄エンドなんてなったら目も当てられませんからね。キャッキャウフフは無事に世界崩壊を乗り越えた後のお楽しみということで!


 まずはケネスに集中。1週間滞在すると言っていたので、その期間でガッツリ友人になりましょう。

 その後は他の攻略対象たちの捜索&知り合うために奔走です!

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