表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
3/15

【第3話】RPGやったことあんのか!



瞼の裏に、

淡い光を感じた。



薄目からゆっくりと持ち上げて、光の彼方を見つめると、

雲一つない澄み渡った青空が広がっている。



頬をそよぐ風の暖かさが心地よい。



大の字に伸ばしたままの手足を、

草原の絨毯が波打つようにくすぐってくる。



いやぁ~。

気持ちいい。



こんな日はあれだなぁ。

彼女とほっこり遠足デートだなぁ。

家で作ってくれたお弁当とか一緒に食べたりしてさ。



「キミが焼いてくれた卵焼きよりも、甘くてとろける恋をしよう」



「うん、大好き!」



みたいなね。



女心を鷲掴みにする熱い決めセリフ、

かましてぇなぁ。



それにしても長閑で、落ち着いたこの空間。



夢見心地のまま、

見上げていた空の彼方。



青一色の世界に浮かんだ、赤い点。



あれは・・



思考を巡らす間もなく、

点から円に、円から巨大な塊に、

形を拡大しながらもの凄い勢いでこちらに急降下してくる。



「おいおい・・嘘だろ」



両翼を交差して内側に折り畳み、

気流を切り裂きながら滑空してくるその姿。



実物なんて見たことがない。



いや、違う。



本来は見れるはずがない、

伝承や神話における伝説上の生物が、そこにいた。



「ドラゴンじゃねーか!」



次の瞬間、

鼓膜に直接痛みを感じるほどの衝突音と、

振動が体中を貫いた。



「炎竜ガルアオロスの攻撃、グライダープレスです」



突然、頭の中で抑揚のない機械的な音声が反響する。



「誰だお前、うるせぇよ馬鹿!」



炎竜?攻撃?

なんちゃらプレス?



意味わかんねーけど人の頭の中で勝手に喋んな!



辺り一帯の地面は蜂起し、

土煙が舞い上がって視界を遮った。



ふいに右腕に走った、衝撃。



「ぐぁぁぁあああ」



巻き上がった土煙が口の中に入り、

喉の奥に張り付いて呼吸が困難になる。



「被ダメージ計測中。解析完了。情報を展開します」



再び頭の中で一方的に反響する声。



目の前にはホログラム調の薄緑をした透過ウインドウが出現し、

デジタル表示されている120のライフポイントが一気に25まで減算した。



「ライフポイント危険域に突入。対象によるあらゆる攻撃の回避を推奨します」



ちょっと待てよ!



どうなってんだ!



こいつは勝手に頭の中で喋りやがるし、わけわかんねー単語は飛び交うし・・



って、あれ?



右腕の激痛が、いつの間にか完全に消えてるんだが・・



慌てて目の前に右腕を起こすと、

あるべきはずのものが、ない。



肘から先の腕が、綺麗さっぱりなくなっていた。



「あじゃぱぁぁぁあああ!!」



恐る恐る右肘の辺りを覗きこんでみると、

中は暗闇に包まれていて、ぽっかりと空洞になっている。



「被ダメージの許容値オーバーにより、右腕の58%がロストしました」



「お前、淡々と言うよね!」



なんだよこれ。

血とか肉とか骨とかもろもろどこいった!



どうなってんだよ、俺の体は・・



その時、視界を遮っていた薄い土煙が向かい風と共に払われた。



「マジかよ・・」



目の前の光景に圧倒されて動けない。



3階建てのビルの高さはあろうかというその全長。

切り立った岩肌を連想させるような、いびつな凹凸のある赤い鱗に覆われた体。



鋭い鉤爪と牙を具え、

狩りの対象としてこちらを見据える獰猛な目つきは、一切の隙がない。



「本物の・・ドラゴンなのか?」



「ヴァァアアアアア!!」



首をしならせながらありったけの叫び声をあげるドラゴン。

すると、ほぼ同じタイミングで、頭の中に例の抑揚のない機械的な音声が反響した。



「バトルが開始されました」



「お前は、生粋の自由人なのか!」



ドラゴンの声圧から押し寄せてくる衝撃波で、

全身がビリビリと震えている。



現実感は全くないが、夢ではない。



無意識にドラゴンの額の近くに視線を合わせると、

「情報を展開します」という声に合わせて、

ホログラム調の透過ウィンドウが再び空間に展開された。





【ネーム】


炎竜ガルアオロス



【レベル】


270



【タイプ】


ドラゴン



【クラス】


ボス級



【ライフポイント(LP)】


78000



【アルティメットスキル】


■グライダープレス 

威力E 範囲攻撃 LP-5000


■エナジーフレア 

威力D 範囲攻撃 LP-12000


■エンド・オブ・ソロウ

威力A 範囲攻撃 LP-1~78000






なるほど。



たぶんやべーやつ。



「おい、聞いてんだろ。誰だかわかんねーが、現状の俺のステータスも出してくれ」



「了解しました。情報を展開します」





【ネーム】


海崎剣聖



【レベル】




【タイプ】


非戦闘員



【クラス】


旅人A



【ライフポイント】


25



【アルティメットスキル】


■なし




なるほど。



装備も技も何一つない非戦闘員の旅人Aが、

始まりの場所で、急に空から降ってきたボスと戦うことになる。



わかりました。



鉄壁の死亡フラグですね。



「RPG・・やったことねーのか、クソ野郎!!」



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ