第3章 35「二本の神」
男の黒エルフに貪るように触られ、激しく嫌悪感を抱いた。
私がいくら叫んでも男どもは行為を止めようとはしなかった。
もう無理だ…
そう考えていたとき、私に覆い被さろうとしていた男が死んだ。光に貫かれて。
周りの視線が一人の男に向かう。
この国の王マサキだ。
「ま…さき…さま…」
弱々しく自分から出た言葉には深い感激が含まれていた。
マサキは自分を捕らえていた縄を切りほどき、ゆっくりと立ち上がった。
彼を囲むように黒エルフ達が並んでいる。詠唱が止まった瞬間、鼓膜を破る程の爆発音が耳を刺激する。
魔法の攻撃対象は黒エルフ達の中心にいるマサキだ。
「マサキ様‼︎」
爆発の中心にいた男を目で探すが見つからない。代わりにあったのは光り輝くドーム状の何かだった。
唖然となって見ていると外壁がポロポロと崩れ始めた。
中から姿を現したのはマサキだった。
「お前達は下がっていろ…私が相手だ」
そう言って前に出るのはエルフ族の長、名前は確かドゥラルート。
「かかって来なよ」
そう言うマサキが出しているのは左手の人差し指一本…その先に小さな光の剣が浮遊している。
「ゆくぞ!」
黒エルフのドゥラルートが出したのはこの国で採れる鉄の中で一番硬い、グランドメタルから造られたと思わしき、妖艶に光る剣。
対してマサキは小さな光の剣一本だけ。
ドゥラルートの一撃を身体を一回転させながら光の剣で受け止めるマサキ。剣とマサキの動きは完全に同化しているように見える。
大きさの差は圧倒的なのに、ドゥラルートの剣は光の剣に押し負けている。
「ぬぅ…」
マサキは更に剣に力を入れ、ドゥラルートの剣を後ろに跳ね飛ばした。
「剣だけだと思うな!」
胸から杖のような物を取り出して、マサキの方に向ける。
しかし、マサキは動じようとしない。代わりに一つため息を吐き、ドゥラルートの詠唱終了とともに左手を上に掲げる。
瞬間、マサキの手の動きに合わせて地面から光の壁が生じた。
その壁は魔法を全て跳ね除け、またゆっくりと砕けていった。
「次は俺の番かな…」
マサキが両手を天に向けると多くの光の剣が頭上に現れた。
両手を前に振るった瞬間、頭上の剣は加速してドゥラルートを含む、多くの黒エルフに襲いかかった。
マサキの後ろにいた黒エルフや私は開いた口が塞がらなかった。
剣に身体中を貫かれた黒エルフ達は次々に膝をつき、倒れていった。
「貴様…まさかその剣…」
ドゥラルートは弱った声でマサキに問いかけた。
「あ、あぁこれはアルムスの剣だ」
「そうか…やはり貴様は使えるのか…」
まさかこの世にアルムスとサドルカの剣をどちらも操れる者がいるなんて…
そんな話、聞いたことがない。だが、試した者もいなかった。マサキは我々の固定観念に勝利し二つの神の剣を使うに値したのだ。




