第3章 31「空中乱戦」
「アルムスの剣…取りに行くのはいいですが、光明寺までどうやって行くつもりですか?」
「簡単だよ」
疑問に思うユニアに対し、血をある程度落とした黒の大剣を出した。
「まさか…」
「そ、飛んでく」
その発言にまた、周りが溜め息をつく。
「俺が居なくなれば、とりあえずどっかに隠れられるんだよね?」
「だけども…」
俺に反論しようとするユウラを遮り、飛鬼が口を開いた。
「国のトップがそう簡単に死地に行って言い訳ないだろ」
その言葉からは少々の怒りを感じたが、俺の返答はとうに決まっていた。
「国のピンチに何もできないのが、王なら俺はそんなん辞めてやる」
これには飛鬼やユウラも何も言えないようだ。
「じゃあ、私を連れて行って下さい」
そう言うのはユニアだ。意外というほどでもないが、どう返すべきか少々戸惑った。
「嫌だって言ったら?」
「意地でも着いて行きます」
そうですか。と、渋々了承。
「でも、ユニアが一緒じゃ神剣で飛んで行けないよ?」
俺は神剣の炎を受けないが、神剣で行ってしまっては光明寺に着く前にユニアが丸焦げになってしまう。
「じゃあホプスで行きましょう」
「ホプスってそんな簡単に乗せてもらえるんだね」
今までホプスには遠出のときにお世話になっていたため、割と近い光明寺にホプスで行けるというのはなんとなく不思議な感じだ。
「仕方ありません。なんと言っても緊急事態ですから」
ユニアとの話し合いを終え、三人の方に向き直る。
「じゃあ後はよろしくお願いします」
「仕方ないか…ヤバイと思ったらすぐ逃げてこいよ」
飛鬼から生きて帰るよう念を押され、ユウラ、ロウネと頷きあう。
「じゃあまた後で」
そう言ってそこから別行動を始めた。
ホプスの元に着くまで、シャグルーにも黒エルフにも出会うことはなかった。無事ホプスの元へ辿り着き、本日はじゃれつくことなく背中に乗る。
「お願いホプス!」
ユニアのその声を合図にホプスは地面蹴った。空には予想はしてたがシャグルーがいた。
「マサキ様…お願いできますか?」
ユニアは何か迷うように一瞬、間を空けて口を開いた。
「あの!」
急な大きな声に少し驚きながら、耳を傾ける。
「なに?」
「あの人たちを殺さないでください」
絞り出すような声でそう言ったユニア。
まぁユニアがそう言うなら殺さないように努力しよう。
「とりあえずじゃあ、寄せ付けないようにするよ」
俺は黒の大剣を二本にし、一本を足場にしてホプスから降りた。
殺さないように…か。