第3章 26「焼けたローブ」
なんだろう…少しだけ温かい。
冷たいドロドロに支配されたはずの身体で仄かに感じる温かさ…
そうか、これは…
「…ッハ」
視界が戻り、いきなり入ってきた太陽の光に目を焼かれた。
周りを見渡せば、飛鬼、ミッダ、テニー、ユニア、更にはユウラまでいる。
「俺は…」
「あなたは今の今まで『影』になっていたのです」
俺にそう説明するユニアの顔には少々戸惑いの色がある。
「どうしたの?」
ユニアは目を俺から逸らし、何も言わない。
「あれだけの致命傷が…」
そう言われ、自分の身体を見ていると俺の身体はなんと無傷。更には身体の奥底から力が湧き上がってくる。
なんだかとっても…
「いい気分だ」
自分の歪んだ笑顔に気づき、ハッとなった。
「助けてくれてありがとうございます」
今更ながら俺を囲っている人々にお辞儀をして一礼。
「さ、これから黒ローブをどうするよ」
手を叩き、周りの淀んだ空気をミッダは入れ替えた。
「その必要はないですよ…」
俺がそう言うとみんなは俺の方を驚いた表情で見た。
「今からぶっ倒してきますから」
目が開けてから奴の居場所が手に取るようにわかる。あの真っ黒なオーラが、周りにもいくつかある。
俺は黒の大剣を片手で持ち上げる。
今まで炎がないと持ち上がらなかった剣は軽々しく持ち上がる。
「っえ?」
俺のこの変化に今まで一番近くで俺を見てきたユニアは驚きの声を漏らす。
「じゃあ…行ってくる」
剣から放たれる炎により足は地面から離れ、一直線に黒ローブの元に向かう。
数秒とせずに黒ローブの元についた。
「わぁ生きてたんだ」
「あぁ残念なことにな」
黒ローブの周りには五体の『影』、つまりは六対一だ。でも今は
「負ける気がしないな」
黒ローブは右手を前に出し、それを合図に『影』たちが俺に襲いかかる。
目の前から一体、左右から二体ずつ…
炎で剣を拡大し、一閃。
五体の『影』いや人はそれぞれの場所に斬り口を開く、一つ共通してるのはその斬り口から身体は上下真っ二つに分かれていること。
「ヒュ〜」
口笛を茶化すように吹く、黒ローブ。
すまないと思っている…でも、なんていうかどうでもいいとも思っている。
だから真っ二つにしても何も感じないんだ。
「次はお前だよ」
「やってみなよ」
黒ローブは漆黒の剣、サドルカの剣を取り出し俺に向かい合った。
俺と黒ローブは同時に地面を蹴り、剣をぶつけ合った。
両手に大剣を握り、互いの剣は一切動かない。
「やるなぁ魔王様」
加速‼︎
そう考えた瞬間、剣から炎が出て加速される。
同等だったパワーバランスは砕け、黒ローブの剣は弾れた。飛び散った炎は黒ローブの勝手にトレードマークとしたローブを焼いた。