第1章 8「炎の力」
ミッダに会いに行くと道場のようなところへ着いた。
彼は道場で多くの人たちと共に正座していた。
「すみませーん。ミッダさんいますか?」
ユニアは大きな声でミッダに声をかけた。
「何か?」
ミッダは片目を瞑ったままユニアの方を見た。
いつも感じていた大雑把な雰囲気ではない。まるで別人だ。
「言いたいことはいっぱいあります…が、とりあえず外に出て来てください」
ユニアはガツガツとミッダの方へ近づいて行く。すると1人の男がユニアの前に立ちはだかった。
「オイ、ミッダさんに失礼じゃないか」
その男は見た目は完全に人間そのものだが頭に二本のツノが生えている。
鬼…だろうか?
「やめろ飛鬼…わかった行くよ」
ミッダはおとなしく外まで来てくれた。
「…んで?用件はなんだ?」
「一つ目は魔王の大剣について知ってることを教えてください、二つ目は昨晩のドアのこと…」
ドアのことと聞いた瞬間ミッダはびくりとして咳払いをした。
「…魔王の大剣か懐かしいな。知ってることなんかそんなねえよ」
「そうですか…」
「なんだそこのチビ魔王はあの剣使えんじゃねぇの?」
「いや、それがその…」
返答に困った。使えないというのは思いの外恥ずかしい。
「使えません」
おとなしくそう答えた。
「はぁそうか。じゃあいっそのこと一回誰かと闘えば?」
「はい?」
思わず聞き返してしまった。
「まぁちょっと待ってろ…」
そう言ってミッダはどこかへ行ってしまった。
「どうしましょう?やります?」
ユニアは不安そうな表情でこちらを見てきた。
確かにまだ剣も魔法も何もできない。しかしこの世界の人のレベルを知るにはいい機会かもしれない。
「まぁやってみるよ」
ミッダはさっきの鬼、飛鬼を連れて戻ってきた。
「ま、まさか僕が闘う相手って魔王様ですか?」
飛鬼は闘うということ以外何も聞かされない状態で連れてこられたらしい。
「まぁそういうこった。安心しろ魔王つったってまだ『神剣』も使えんアマチュアだ」
ミッダはそのように飛鬼に言った。
『神剣』とはいったい?
「まぁとりあえずやってみ」
ミッダにそう言われると飛鬼はマサキから距離をとりどこからか日本刀のような太刀をとりだした。
「さぁ構えて‼︎」
飛鬼が大声で叫んだ。
俺は剣を出すととりあえず柄の部分を掴んだ。
静かになった瞬間
「行きます‼︎」
飛鬼が叫んで突っ込んで来た。
まずい‼︎
そう感じたがどうにもできない。
防御防御何か防御手段…
飛鬼の太刀が自分目掛けて飛んでくる。
剣で防御しないと…
そう考えた瞬間、大剣から炎が出てきたしかし首飾りを着けたときと同じく熱さは感じない。
大剣は太刀に追いつきその太刀を弾いた。
「ッチ‼︎」
飛鬼は体勢を崩した状態でこちらを睨んでいる。
このまま反撃へ。
飛鬼に向かって突っ込もう。
そう考えるとマサキが握った大剣はマサキを連れたまま飛鬼へ突っ込んだ。
「うあああ‼︎」
とてつもない速さ。握っているだけで精一杯。
もう少しで飛鬼を倒せる。そう考えた。
しかし剣は急に止まり視界が暗くなる。
「え?」
「悪りぃなこのままだとうちの弟子がやられちまうとこだったんだ」
この声はミッダ?
どうやらミッダに頭を掴まれて止まったらしい。
「にしても熱いなこいつ止めても根本的な解決にはならんか…ちょっとごめん…な!」
またミッダにみぞおちを殴られた。
「…ぐあ…ま、たみぞ…お…ち…」
意識が遠くなり気を失った。