第3章 22「マサキのいない町」
マサキ様とサファラに戻ってから数分、テニー達に帰還の報告をしようと階段を下っていた。
マサキ様はミッダに会いに行くと言い、急いで外へ飛び出して行った。少しは休んでください。と、言ったもののそんなことより。と、返されてしまった。
「はぁ…」
二日酔いで迷惑をかけてしまったことを少し…というか思いっきり心残りに思う。昨日酔った勢いで変なことを言っていないだろうか?
そう思うだけで背筋が冷たくなる。
そんなことに思考を巡らせていると外が太陽が近づいてきたかのように明るくなる。
「うっ」
思わず目を細めそんな言葉を漏らす。その太陽は数秒間光ったところで輝きが失せていった。
今のはいったい?
「ユニア!」
そう私を呼ぶのは訓練用の黒いパンツに白いタンクトップと周りの人、主に男性の目が心配になる格好をしているテニーだ。
「テニー、ここで何を?」
「あんた今の炎見えなかったの?」
炎?私が太陽と思ったあの日からの正体は炎だったというのか?
「でもいったいどこから?」
「わからない。でも、下から立ち上ってたのが見えたから多分…」
城の下にある広場で誰かが魔法を使ったのだろうか?
それでもあれだけの炎、魔法を専門職としている人でも難しい。
「とりあえず下に行ってみよう」
テニーの提案に首を縦に振り、階段を下った。
疑問がいくつも上がってくる。しかし、自分で思考を巡らすより見たほうが早いだろう。
テニーと共に階段を駆け下り、城を飛び出した。そこに広がっていた光景はいつもの和やかな町ではない。ミッダと魔族の郷で出会った黒ローブが剣を交えている。
広間の壁には飛鬼がもたれかかって気を失っている。
マサキ様は?あの炎を放ったのは?
最悪の結果だけは避けてほしいという願いと共に周りを見渡す。
そこには十数人に囲まれた、『影』がいた。その姿は今まで見てきた『影』とは一線を画し、身体中から炎を漏れ出している。
その拳から放たれた拳や蹴りからは炎がほとばしり、十数人を物ともせずに圧倒している。
「マサちゃんは?」
テニーも心配を隠しきれず、不安そうな声でそう言う。
「とりあえず、探しに行こう」
この場にいないと判断し、その場を後にして町へ飛び出す。
あのどんなことにも首を突っ込むマサキ様がこの場にいないことに少々の違和感を覚えるが、『いない』という現実からそれについて深く考えることをしなかった。
一体どこに?どうか無事であってほしい。
そのような願いを胸に私はテニーと共に駆け出した。