第3章 19「小さな一歩」
「サファラ?」
俺とユニアが来た地点であり、ここからなら数日かかるという。
「…それはその果物買ったのはいつ?」
ミルドの質問に青年は唸りながら考えてから口を開いた。
「あの敵国の侵攻がひと段落して、数日後のことっすかね」
そうすると時間はそこそこに経過している。
「ついでにそれから今日までの記憶って…?」
「一切何にもないっす」
「そうか…わかったよ」
ミルドと青年の会話が節目を迎えたところで俺はミルドを部屋の隅に連れて行った。
「俺、あんまりあの人が嘘ついてるようには見えないんですけど」
「それに関しては同感…彼らは『影』の力によって自我を失った類の人間ってことだね」
現時点では特に彼らに問題はないという結論に至った俺たちは再び牢屋と向かい合う。
「最後に一つ聞かせて欲しいんだけど」
「なんっすか?」
「黒いローブの男を最近見た?」
俺の質問に青年は考えるそぶりを一切見せず、言い切った。
「はい、見ましたよ。サファラで黒ローブの男に道を聞かれました」
俺とミルドは一斉に顔を見合わせた。
「そんときそいつに何かされなかった?」
「なんかって言われても…あ!」
「なに?」
「そいえば握手しましたよ。ガッシリと力強く」
握手?それが『人間』を『影』に変える手がかりなのだろうか…
「ついでにそいつの顔とか見た?」
「顔はフードを深くかぶってたので…」
「そうか。ありがとう、君らが何もしてないのはなんとなくわかった」
「おいマサキ、まだ…」
さらに続けようとするミルドを片手で止め
「俺には彼らが嘘をついてるようには見えません」
「そりゃ…まぁ」
「じゃあいいじゃないですか」
ミルドは縦に首を振った。
「君らがいち早く出られるよう…頑張るよ」
ミルドのその言葉を機に俺は牢獄から出た。時間はすでに10時すぎ、
「そろそろ戻らなきゃ、ありがとうミルドさん」
「いや…いいさ」
俺はユニアの元へ戻り、状況を見た。
「大丈夫?」
テーブルの上でうなだれるユニアにそう声をかける。
「えぇ…大丈夫です」
いかにも大丈夫じゃなさそうな声を上げるユニア。
「サファラまで戻れる?」
「任せちゃって下さい…」
心配だ。
するとドアがノックされ開かれた。
「あら、その方大丈夫?」
そう言うのは俺に朝食をご馳走してくれた女性だ。
「実はまだ治らないみたいで…」
「あらま」
ちょっと待っててと言い残して彼女は何かを持ってきた。
「これ、グイーッと飲みなさい」
「え…ちょ…」
そう言うユニアを気にもせず何か飲み物を流し込む。
大丈夫だろうか?




