第3章 16「酔っ払いってめんどくさい」
外で郷中の人が賑やかにご飯を食べたり、お酒を飲んでいる光景はなんとも和やかなものだった。
「ひっく、お?アンタが魔王さんか一杯どうですかい?」
酔っ払った人に絡まれるのももう何回目か…
「僕、お酒飲めないんですよねー」
そう言って回避を試みること数回。
「えぇ?魔王なのにお酒飲めないの?そうかそうか…ガハハハ」
そう言って去って行くこのおじさんは数分後にまた来るのだろうな…
このお祭り騒ぎが静まりを見せたのは日をまたいだあたりだろうか。俺を待っていてくれたユニアとともに今日泊まる予定の宿へ向かう。
「まっおうさまは全然のまないんですねえー」
今までユニアがお酒を飲むことなどなかった。というか
「ユニアってまだ十六じゃなかった?」
「へ?そうれすよ…この国は十五から飲酒がオーケーなんでーす」
なるほどだから俺にもお酒を勧めてきたのか…
完全に出来上がっているユニアに肩を貸し、呂律の回っていない案内を頼りに宿に着いた。
「疲れたー」
ユニアをベッドに寝かせ、部屋を少し歩き回る。何度見回してもベッドは一つ。
「なーにしてるんですかー」
酔っ払ったユニアが後ろから抱きついてくる。
「いっしょに寝ましょーよ」
「ベッド一つしかないし、ユニアが使っていいよ」
「なーにいってるんですかー国のまおうさまがー」
酔っ払ったユニアがこんなに面倒だとは…
「わかった、わかったから先寝てて」
ユニアは俺を向き直させ、酒のせいで火照った顔で
「おとこが、夜這いのひとつもかけられなくてどーするんですかー」
「な…」
夜這いという言葉の意味をしっかり理解してるのだろうかこの子は…というか本気で言ってるのだろうか…心臓の鼓動が早まるのを感じる。
「ゆ、ユニアさん?」
「なーんでーすかー」
俺はユニアをベッドに連れ戻し、横にした。
「はぁ…」
一つため息をついて
「いい子にして寝てなさい」
そう一言告げた。
このままいくと俺の理性が限界を突破し、歯止めが効かなくなりそうだ。
ベッドに寝かせた瞬間、寝息を立てる少女を見て少しだけ安堵し、自分も部屋のソファで眠ろうと歩き出そうとしたとき、背後から
「ましゃきさま…」
寝言だろうか?寝言だろうきっと…でもなんかちょっとだけ嬉しい。
軽いステップでソファに横になり、ベッドから持ってきておいた毛布をかけて瞼を落とす。
ユニアは夜這いなど本気で言っていたのだろうか?
そのまま勢いに流されていた方が俺的には幸せだったのかもしれない。
でも、そんな風にしたら明日から気まずくなりそうだな…
自分の回答は正しかったと言いつけ、深い眠りに落ちていった。