第1章 7「剣は飛べるがほうきは飛べない」
俺は庭園でうつ伏せになった状態で呟いた。
「剣も…魔法も…何もできない…か…」
頑張ろうとは思ったが現状の何もできなさに絶句する。
「マサキ様は空を飛べると思いますか?」
ユニアに唐突に質問された。
「空か…」
元いた世界では空を飛ぶことはそんなに難しいことではない。
飛行機やヘリコプター、色々なモノが空を駆け巡っていた。
「どうだろうね」
この世界の素性をあまり知らない今、下手なことを言うのは禁物だ。
「私は昔、マサキ様の前の魔王様が空を飛んでいるのを見たことがあります…」
「へえ。ほうきとか?」
「何を言ってるんですか?あんな掃除の道具で飛べるわけないじゃないですか」
とても現実的な理由で論破されてしまった。ファンタジーの世界でもほうきでは空を飛べないらしい…
「じゃあ何でとんでたの?」
「その剣です」
ユニアは目の前にある黒い大剣を指差した。
「これで飛べるの?」
「わかりません。何しろ幼かったものですから…でも私の記憶が確かなら魔王様はこの剣に乗って空を飛んでいました」
前魔王はこの剣をどのようにして飛んだのだろう?
考えても思いつかない。
「ついでにそれは何歳くらいの話?」
聞いてから気づいたが俺はまだユニアの年齢を聞いていない。
「私が6歳くらいの時なので10年くらい前のことだと思います」
ということはユニアは今16歳ということだ。学年にして高一。俺は高二で17歳つまり…
「俺の方が歳上かよ…」
「何か言いました?」
「いえいえ何も」
昔から身長が小さかったため高校生になった今でも中学生に間違われる。
ユニアに自分が年下と思われてるかもと少し心配になった。
しかし今優先すべきはやはり剣のことだ。
「じゃあとりあえず空の飛び方知ってそうな人でも探してみる?」
「でもそんな人どこにいるんです?」
「いるじゃんどう考えても年配者でなんかいかにも知ってそうな人がさ」
「それはいったい?」
「ほら、ミッダさん。ミッダさんなら何か知ってそうじゃない?」
そう聞いてユニアもピンと来たらしい。
「なるほど確かにあの人なら何かしら知っていてもおかしくありませんね」
「夜になったらどうせ会うことになるけどその前に聞いておきたいよね?」
「そうですね。では今からミッダさんのところへ行きますか…ドアの件で聞きたいこともありましたし」
ユニアはドアのことになると怖い。この世界にも器物損壊とかってあるのかな?
そんなことを考えながらユニアと共にミッダのところへ向かった。